アルツハイマー病患者の看病
2014年にヌーヴェル・オプセルヴァトゥール誌(現L’OBS)が、アニー・ジラルドーのポートレートを表紙に〈アルツハイマー特集〉を組み、在宅介護家族の証言を掲載した。
ある定年男性は、アルツハイマー病の妻は、数分でも彼が離れると発狂状態になり凶暴化へと悪化したと語る。日夜アルツハイマーと闘い、妻を看取った。夫は「ジョウゴに滑り落ち、ボトルの中に流し込まれたようだった」と、その苦悩を5つの言葉「罪悪感、無力感、孤独、疲弊、怒り」で表している。
ある息子は「ぼくたちはもう限界に来ています。しかし母を老人ホームに入れたとしたら、パリでは最低3000€はかかります。どうやって私たちにまかなえると思います?」 自宅介護をする身内の肉体的、精神的疲労は想像以上で、家族介護人の3分の1は患者より先に過労死するという状況は、アルツハイマー病が本人以上に身内、家族を日常的苦悶の生活に引き込むことを示している。
アルツハイマー患者には「物盗られ妄想」や「介護拒否」の他、「散歩者」と呼ばれる「徘徊型」があり、自宅からネグリジェのまま数日森などを歩き回り、死体で見つかった高齢女性や、夜間高速道路を彷徨った老人男性の例など、警察の調べでは、アルツハイマー病患者の行方不明は年に約500件にのぼるという。