フランスは、どこまで高齢者社会に対応できるのだろうか。
現在フランスには、高齢者を対象とする老人ホーム(メゾン・ド・ルトレット)やフォワイエ(集団宿舎)、受入れ家庭、レジデンスなどがある。
2000年に入ってから、イル・ド・フランス地域圏が老人ホームの不足に直面し、日常生活に介護が必要な高齢者の居住・医療問題に真剣に取り組み始めたと言える。APA(高齢者個別自立手当)財源の68%は県が負担し、残りは自立連帯公庫(CNSA)が援助。2010年には在宅者(40%)、ホーム入所者(60%)、合わせてAPA受給者は114万人にのぼる。
2040年には同手当の受給者は120万人に達する見込み。そのための県の支出は100億ユーロに達する。国家レベルの対策なしには、高齢者社会の対応に立ち遅れるのは明らかだ。
日本には大分前から公・民間介護保険がある。フランスにもないことはないが、まだ一般化していない。自分がアルツハイマー病などになっても、子どもに迷惑をかけないようにと、生命保険より、むしろミュチュエルの介護保険(Epargne Dépendance)に関心が高まりつつある。
筆者を含め、日本人在住者のなかで60〜70年代に来仏した人たちは80歳前後になっている。筆者の昔からの友人女性2人がすでにメゾン・ド・ルトレットに入所している。彼女たち、そしてこれからの私たちの終の住処(ついのすみか)になるかもしれない老人ホームに、無関心ではいられないのである。