フランスの大統領府「エリゼ宮」の引越しに、賛成44%、反対56%との世論調査の結果をル・パリジャン紙が掲載した。今回のこの「引越し話」は、右派の大統領選候補者予備選に名乗りを上げたフランソワ・フィヨン元首相が「エリゼ宮は古く、現実にそぐわない。もっと近代的な建物に」と言ったことがきっかけだ。
1722年築のこの館に大統領府が置かれたのは1848年。国の歴史的建造物に指定されているため最新インフラを取り入れたくても簡単にはいじれない。改修費も高い。長い廊下と小さいオフィスが不便だそうだ。
オランド大統領も、社会党の理想と豪奢な大統領府の矛盾と不便さから「他にもっと適した場所がある」「外で戦いがあっても気づかないような(現実離れした)場所」などと言っている。しかし今は、巨額の引越し代、首相府の近くにい続けることへのこだわり(今は数十メートルの距離)などを理由に、引越しは考えていない。
アンケートでは、エリゼ宮を形容する言葉として「威厳」「美」「外国にフランスをよく見せる」「国民と乖離(かいり)」「絶対王政的」「浪費」「不便」などの言葉が挙げられた。ホワイトハウスのように世界に知られるフランスの威厳ある権力のシンボルとして愛着を感じる反面、お金を必要以上に使ってほしくない、というジレンマのようだ。今まで、ミッテランがアンヴァリッドに、サルコジは陸軍士官学校に移転を考えたという。しかしながら、大統領選前に湧いてくる大統領府の予算削減のアイデアも、いったん住人になると忘れられてしまう。同紙によれば大統領府は810人を雇い、年間予算は1050億ユーロだそうだ。(集)