トゥロン、その名前を聞いて目を細めないスペイン人はいないだろう。それほど根強く愛され、とりわけクリスマスの時期には街を賑わし、食卓を飾る菓子なのだ。
卵白、砂糖、アーモンドから作られるマサパンは、トゥロンの原型で、南仏の名物菓子カリソンに近い。それにハチミツを加え生まれたのがトゥロンで、元祖トゥロンは丸ごともしくは大きく砕いたアーモンドで作られ、フランスのヌガーとほぼ同じ。なのだが、マサパンもトゥロンも、スペインにしかない独自のものがある。それが粉末状のアーモンドで作る、俗にturron de Jijonaと呼ばれるもの。柔らかく壊れやすいこのトゥロン、口の中で粉々になり、油分を多く含むのでしっとりと繊細に溶けるその食感は唯一無二で病み付きになる。いつまでも食べ続けてしまいそうな、危険な誘惑だ。また、マサパン同様の製法で、卵白ではなく卵黄で作るyemaと呼ばれるものは、卵黄ならではのもったりと濃厚な味わいで、少量味わう分には絶品だ。
そのトゥロンを1775年創業で作り続け、スペイン全国に28店舗を持つVicensが今年5月にパリに出店した。クラシックはもちろん、チョコレートやココナッツ、ヨーグルトを使用したコンテンポラリーに加え、伝説のレストラン「エル・ブジ」の総シェフを兄に持つAlbert Adriàとのコラボレーションなど、常に新しい味を追求し続けるこのお店のトゥロンは80種類を超える。サイズも80g (2.5€)から500g(13.5€)まで幅広く、美しいギフトセットも用意あり。(み)
Torrons Vicens
Adresse : 21 quai de la Tournelle, 75005 ParisTEL : 01.4202.2362
アクセス : M° Cardinal Lemoine, Pont Marie
10h-20h 無休