8つのエピソードで計12時間55分!製作から45年を経て、デジタル修復で蘇るジャック・リヴェットの伝説の長編4作目。これまで4時間の短縮版で我慢していたシネフィルが多かったが、配給会社カルロッタがきっぷのよさを見せ、11月18日から奇跡の劇場初公開が決定。2週間の限定公開だ。DVDやVODでも同時解禁される。
登場するのはふたつのアングラ劇団。転がったり、うめいたり、仲間の足を噛(か)んだりと、即興も厭(いと)わず練習を続けている。そこへ長い長い練習風景を打ち破るように、二人のトリックスター的人物が紛れ込む。ひとりは自称・聾唖(ろうあ)の青年コリン(ジャン=ピエール・レオー)。ハーモニカを雑に吹き鳴らし、「運命のメッセージ」をカフェの客に押し売り。もうひとりはコソ泥美女フレデリック(ジュリエット・ベルト)。「ああ言えばこう言う」方式で、のうのうと盗みを続ける。ある日メッセンジャー、コリンは、謎のメッセージを受け取った。やがて秘密結社の存在を匂わすこのメッセージの謎解きに、登場人物たちの運命がゆっくりと重なってゆく。
レオーやベルトを筆頭に、マイケル・ロンズデール、ベルナデット・ラフォン、ビュル・オジエ、エリック・ロメールら重要な映画人の競演が贅沢。タイトルの「OUT」とは「IN」の反対の「OUT」。一般の映画作りの「外」にあることを高らかに宣言するのだ。リヴェットは前作『狂気の愛』でつかんだ即興の可能性を最大限に推し進めた。まだ映画の自由と可能性が信じていられた70年代。魅惑的な無謀さと無邪気さ、そしてヌーヴェル・ヴァーグという軽くて重い刹那の輝きを、スクリーンで胸いっぱい吸い込めるだろう。(瑞)