神様はいた、ブリュッセルにいた、しかもかなりの卑劣漢だった! そんな型破りな設定を料理したのは 『トト・ザ・ヒーロー』で知られるベルギー人ジャコ・ヴァン・ドルマル監督。悪ふざけコメディに見えながら、実は詩的で誠実、「天国より今を生きろ」と見る者の背中を押してくれる心根の優しい作品だ。監督に話を伺った。
- 型破りな設定をどのように考えましたか。
今回は共同脚本家と「もしも神様に10歳の娘がいたら」 「もしも神様が娘に復讐されたら」 「もしもその復讐が人間に死亡時刻を知らせることだったら」というように考えていきました。舞台のブリュッセルは工事が多く雑然としてますが、その汚さが美しくもある町です。
- ブノワ・ポールヴールド、ヨランド・モローらベルギーの個性派俳優の共演が見所。その中でフランス人のカトリーヌ・ドヌーヴが溶け込んでいます。
彼女は大女優ですが、新しい挑戦に心を開いてくれます。今回はゴリラを愛する人妻役を快諾してくれました。彼女が恐れるものなど何もありません。ゴリラとのベッドシーンではネグリジェを着ていても大丈夫と言ったのですが、「私はネグリジェを着て愛は交わしません」と返されました。
- 想像力豊かなベルギー映画を象徴する一本に思えますが。
ベルギー映画と言っても、現実寄りのダルデンヌ兄弟から、私のように感覚的な映画を撮る人まで様々。しかしビジュアル重視の傾向はありそうです。複雑な歴史を持つブリュッセルでは、仏語、フラマン語 (オランダ語の一種)、英語が話されます。複雑だからビジュアルに頼りがち。BD (バンドデシネ)が発達したのも偶然ではないでしょう。(瑞)