ロベール・マレ・ステヴァンス作品集
ポール・ポワレ邸
Villa Paul Poiret(1924)
カヴロワ邸、ノアイユ邸と並ぶ、マレ・ステヴァンスの代表3作のひとつ。パリ西郊のメジ・シュル・セーヌにある優雅な邸宅です。オートクチュールの元祖ポール・ポワレが、セーヌを見下ろす丘の上に建てた。真っ白な外観はまるで当時流行のパクボ(豪華客船)を思わせる。
カヴロワ邸のホールと似たガラス張りの吹き抜けのサロンからは、緑につつまれセーヌの流れが一望できる。20年代初めには超売れっ子だったのに、この家の完成直後に一気に没落したポワレは、この家に住むこと無く手放してしまう。その後エルヴィール・ポプスコという舞台女優が、1985年に死ぬまで住んでいた。その間、改造され損傷も進んでいたけれど、1984年に歴史的建造物の指定を受け、少しずつ修復が進められている。ただし、たびたび持ち主が変わるため完全な修復と公開の予定は不確定で、内部を見られるのは毎年9月の歴史遺産の日だけです。 32 route d’Apremont 78250 Mézy-sur-Seine
マレ・ステヴァンス通りアトリエ住宅群
Les hôtels particuliers bordant la rue Mallet-Stevens(1927)
パリ16区マレ・ステヴァンス通りは、彼自身が開発した閑静な路地。ル・コルビュジエの«ラ・ロシュ邸»が目と鼻の先にある。マレ・ステヴァンスの自宅兼アトリエと、友人の芸術家たちのために設計した白い立方体を組み合わせた家6棟が並んでいる。自宅の隣に彫刻家マーテル兄弟のアトリエがある。
Rue Mallet-Stevens 75016 Paris
ノアイユ邸
南仏コート・ダジュールのリゾート地イエールの裏山に建つ、別荘というよりプライべート・ホテルのような家。シャルル・ド・ノアイユ子爵とマリ・ルイーズ夫人は、この自邸で文化人たちを招いてサロンを開き、新進芸術家たちのパトロンとして、文化人、社交界の中心的存在だった。
インテリアや家具はアイリン・グレー、ペリアン、プルーヴェ、ピエール・シャローなど、夫人が選んだデザイナーが担当。フランス最初の室内プールはマレ・ステヴァンスがデザインしている。地中海を見下ろすこの館もそういう文化サロンとして造られ、ピカソ、ダリ、コクトー、マン・レイなど若手の芸術家たちが招かれていた。歴史的建造物指定の後改修され、イエール市の管理で展覧会場として使われ、春の「イエール・国際ファッション・写真フェスティバル」はよく知られています。Montée Noailles 83400 Hyères
L’atelier du verrier Louis Barillet(1932)
アトリエ住宅・バリエ邸
パリ15区、ヴォジラール駅近くの路地スクアール・ヴェルジェンヌの奥に建つ、5階建ての大型アトリエ住宅。ガラス作家でマレ・ステヴァンスの協力者だったルイ・バリエの工房だった。階段塔のガラスに刻まれたモノクロのアールデコ模様が美しい。廃屋化していた建物が修復され、アートやデザインの企画展を開いていたけれど、オーナーのイヴォン・プーランが急死した後、公開も休止され、売りに出されているらしい。
15 square Vergennes 75015 Paris
映画の装置
Décors de cinéma
マレ・ステヴァンスは1920年代に、マルセル・レルビエ監督『幻影』など、何本かの前衛映画の装置をデザインしている。彼は映画の仕事を通して、光と影の効果の大切さを会得した。それは彼の建築の空間構成によく生かされている。
椅子
Chaises
カヴロワ邸でほとんどすべての家具をデザインしたマレ・ステヴァンスだけれど、食堂や屋上庭園などに置かれた、鉄板と鉄パイプの黒い椅子は、バリエ邸のためにデザインしたものらしい。この肘掛け椅子とともに知られているのが、肘掛け無しのタイプ。1928年に作られたこの椅子は、80年代にアンドレ・プットマンが再評価してから有名になったそう。