ル・コルビュジエとマレ・ステヴァンスという建築家。
日本ではほとんど知られていないけれど、ロベール・マレ・ステヴァンス(1886-1945)は、近代建築が台頭し、アールデコが流行した1920年代から30年代のモダニスム建築家&デザイナーとして、ル・コルビュジエと並ぶ大きな存在だった。
ル・コルビュジエがエスプリ・ヌーヴォー館を発表した1925年のアールデコ博(装飾美術・近代産業国際博覧会)では、彼はツーリスム館など、多くのパヴィリオンや、彫刻家マーテル兄弟との共作«キュビストの木»などを手がけて話題を集めている。1929年には、ル・コルビュジエ、シャルロット・ペリアン、ジャン・プルーヴェらと「近代芸術家連合」を創立し、その会長に就任しています。
父のモーリス・マレは、有力な絵画収集家。ステヴァンス姓の母方の叔母の家がブリュッセルにある世界遺産「ストックレ邸」で、ウイーンの建築家ヨーゼフ・ホフマンが設計しアールデコの先駆となったこの家に、マレ・ステヴァンスは強く影響され、彼の仕事の原点となっている。
マレ・ステヴァンスは、この頃各地で開催された博覧会や商店、レストランの内装、ディスプレー・デザイン、映画の装置などを手がけていて、建築設計はお金持ちの邸宅や友人知人のアトリエ住宅がほとんど。公共建築は、パリ16区メニル通りの消防署兼署員住宅など数えるほどしかない。
同時代に共通する志を持ってスタートしながら、その理論と実践を世界中に展開した巨匠ル・コルビュジエと、仕事のひとつひとつを、施主の要請に応えながら、あくまでも自分のスタイルを守ったモダニストのマレ・ステヴァンス。どちらが正解だったのだろう。
パリからの行き方。
パリ東駅からTGVで1時間5分ほどのLilleには、TGVの駅が〈Lille Flandre〉 〈Lille Europe〉と2駅ある。両駅ともトラムが通っているので、R線に乗る。(TGVのチケットがあれば、リール到着・出発30分以内ならトラムのチケットが不要。)Villa Cavrois駅下車。徒歩10分。
Villa Cavrois :
60 avenue du Président John Fitzgerald Kennedy
59170 Croix
入場料:7.50€/6€。25歳未満のフランス在住者無料。
10h30-18h30 (火休)
(一般開放は5月1日から10月31日まで。)