légalité (レガリテ)とlégitimité (レジティミテ)という言葉がある。前者は「合法であること」、後者は、社会運動の中では「(たとえ法律に反していても)倫理や正義に照らし合わせて正当であること」を意味する。法律に疑問を抱いて、あえて法律に背く行動をする人は、自らの行動の「レジティミテ」を主張する。
ジョセ・ボヴェさんは、こうした活動の象徴のような人だ。マクドナルドの店舗破壊で一躍有名になったが、活動歴は長い。21歳で「良心的兵役拒否」運動に参加し、自らも兵役を拒否。ラルザックで農民になり、農地が軍隊の基地に取られることを拒否し、ラルザックの農民闘争に参加した。遺伝子組み換え作物の引き抜きを何度も行い、そのたびに裁判にかけられ、収監されたこともある。現在は欧州議会議員(ヨーロッパ・エコロジー=
緑の党)である。
ボヴェさんに 「レジティミテ」について説明を求めた。ボヴェ:「権力は皆の利益のために行動しているでしょうか、それとも特定の人々の利益のためでしょうか。それを考えてみてください。国には法律がありますが、その上にあるのが人権です。国の法律が人権を尊重するものではなかったら、生命を守るために我々は抵抗します」
法律に反したことをすると投獄されることもある。多くの人はそれを恐れて行動に移さない。これにどう答えるか、と聞くと「投獄されることも抵抗運動の一部です。ガンジーや、アフリカ系アメリカ人が人種差別の撤廃と公民権の適用を求めた公民権運動をご覧なさい。アメリカでは、刑務所を一杯にしようと呼びかけました。投獄されたらそこで主張するのです」
「アメリカの公民権運動で、収監は恥ずべきことではなく、むしろ名誉の勲章であった」と、アメリカの研究者、ゾエ・A・コリーは著書『収監を恐れるなAin’t Scared of Your Jail』(日本語未訳)の中で書いている。収監は、人種差別の非人間性を社会に明らかにする手段の一つになった。公民権運動を辿るとボヴェさんの道も見えてくる。(羽)