1951年製作のイギリス映画 『ホフマン物語』はオッフェンバックの有名なオペラの映画化。公開当時はエピソードごとに分割上映されたこともあり、長らく正当な評価がされてこなかった。だが今月、映画史の隅で輝きを放つ宝石のような本作の修正版リバイバル上映&DVD販売が始まる。修復監修を務めたマーティン・スコセッシや、自作の映画『テトロ 過去を殺した男』で引用もしたフランシス・フォード・コッポラら、一流映画人が賛辞を惜しまぬ本作を(再)発見する好機だろう。テクニカラーの艶かしい色合いまで見事に再現されている。
実在の詩人ホフマンと、機械人形オランピア、高級娼婦ジュリエッタ、歌姫アントニアの3人の美女との情熱的で不可思議な愛の交歓の物語。歌と踊りに乗せ、流れるように綴られる2時間13分だ。スクリーンを極彩色に彩る衣装や小道具、手作り感覚が微笑ましい舞台装置の数々に至るまで全編見どころと言っていい。ポットからアルルカンが飛び出したり、人間の首が突然伸びたりと遊び心も忘れない。スペクタクルの夢が詰まった贅沢な一本で、子どもたちの目も釘付けだろう。傑作『赤い靴』に続き、マイケル・パウエル & エメリック・プレスバーガーの名監督コンビが再びタッグを組んでいる。(瑞)