もうじき2月のバカンス、学校が休みの2週間をどう過ごすか?親は頭の痛いところだ。経済的に余裕があれば家族連れでスキーというのが一つの定番。映画『Snow Therapy』はスウェーデンからフランス・アルプスにやって来た一家の1週間の出来事を描く。ちなみに、雪の多い北の国でも標高差のある山がない国の人たちはこぞってアルプスにやって来るので、フランス、スイス、イタリア、オーストリアのゲレンデは大きな観光資源だ。この映画の舞台、レザルク( Les Arcs )は、1950年代に造られた典型的な冬のリゾート村。
さて、スキー場に着いてホテルで荷ほどきをした一家は、翌日さっそくゲレンデの中腹にあるレストランのテラスでランチ、と、遠くで地響きがして、雪崩がこっちに向かって来る。まさかここまでは来ない、落ち着け!と言っていた父親が、いざやばくなると妻と子供二人を置いて我先に逃げた。雪崩は手前で止まって事なきを得たものの、その後の気まずさといったらない。妻は夫を白い目で見、夫は自己嫌悪に苛まれる。そんな二人の間で子供たちも悲しい。それでも残りのバカンスを消化せねばならない。日常を離れ、家族が親密に過ごす時間と空間の中で…。
命の危険に突然さらされたら、動物的本能が勝つか、人間に課せられたコード、とりわけ男性は女子供を優先して護るという人道的通念が勝つか。あなたは?こればかりはマジにそういう状況に直面してみないと分からないのでないか?
監督のリューベン・オストルンドは前作『プレイ』( 2011 )が高く評価され、カンヌ・監督週間出品に続き東京国際映画祭で最優秀監督賞を獲得、将来が期待される有望株。(吉)