3作目の長編映画『Bande de filles』が公開中のセリーヌ・シアマ。現在最も実力のある仏人女性監督の一人だ。カンヌ映画祭の監督週間でオープニングを飾った本作は、禁止だらけのうっ屈した日常から抜け出そうともがく、エネルギーに満ちた黒人娘たちが主人公。シアマによる「郊外の少女たち」3部作の最終章だ。
名門映画学校フェミスの脚本科出身。2007年に卒業制作を発展させ制作した長編『水の中のつぼみ』で、セザール新人作品賞にノミネートされた。この時、名誉賞を受賞したジャンヌ・モローが、新世代への橋渡しの意味を込め、自身のトロフィーをシアマに渡した。彼女の才能への期待が伺える。
2011年には、中性的な10歳の少女が登場する『トムボーイ』を発表。性アイデンティティの揺らぎを瑞々しく描き、激賞される。本作は、学生に映画鑑賞を奨励する非営利団体が推薦作に指定したが、保守派の保護者たちが上映反対運動を起こしたことも話題に。
今年のセザール賞受賞式では、同性愛がモチーフの『水の中のつぼみ』に主演したアデル・エネルが、現実でも突然シアマへの愛を生放送でカミングアウト。9月には、新創刊されたレズビアン誌の表紙にシアマが登場したのも記憶に新しい。意外と論争やスキャンダルに近いところを歩いている気がするが、あくまで涼しい顔で淡々とやり過ごす知性派眼鏡女史である。(瑞)