グザヴィエ・ドラン、25 歳。最新作『マミー』は、先のカンヌ映画祭で最高賞パルムドールの最有力候補に。ケベック州モントリオール出身。父は歌手で俳優。本人によると、気性の激しさは父のエジプトの血のせい。だが両親は彼が2歳の時に離婚し、もっぱら母の傍らで育つ。エディプスコンプレックスとおぼしき母への愛は、彼の作品の重要なモチーフだ。
4 歳で子役デビュー、10 代半ばでゲイをカミングアウト。17 歳の頃に役者の仕事が枯渇する。だが「カンヌでセンセーションを巻き起こす」と狙いを定め、自作自演の映画脚本に着手。多くの映画人に売り込んだ末、彼の熱意にほだされたプロデューサーが製作を引き受けた。これがデビュー作『マイ・マザー』(09) となり、カンヌの監督週間で本当にセンセーションを巻き起こす。
その後は『胸騒ぎの恋人』(10)『わたしはロランス』(12)で性差を超えた愛の物語をスタイリッシュに紡ぎ、新世代のカリスマに。だがそんな印象を振り払うべく、初のサイコスリラー『トム・アット・ザ・ファーム』(13)を発表。そして休む暇なく、先頃『マミー』がカンヌで審査員賞に輝いたばかり。授賞式では「欲望に限界はない。諦めなければ実現可能。この賞がその証」と語る。意志の人ドランの左膝には、ジャン・コクトーの言葉「作品は汗」が刻まれている。『マミー』はフランスで10 月公開。(瑞)