自伝的コメディ映画『Les garçons et Guillaume, à table!』を、自作自演で発表したギヨーム・ガリエンヌ。本人と母親を一人二役でこなす異色作ながら、210万人の観客を集める大ヒットに。
実業家のフランス人父とグルジア系ロシア人母のもと、ブルジョワ家庭の三男坊としてパリ16区で育つ。幼い頃から女性的な立ち振る舞いをし、憧れの母を真似ることで、演じる喜びも感じていた。18歳で2歳上の従姉妹の死に直面。人生の短さを悟り、俳優業を志す。1998年にコメディ・フランセーズ準座員、2005年に正座員に昇格。古典劇の洗礼を受ける一方、『オーケストラ!』、『アステリックスの冒険〜秘薬を守る戦い』などヒット作に出演。08年、自身の性的アイデンティティに向き合った独白ワンマンショーを手がけ好評を博す。これが映画化の礎に。
私生活では、2004年に結婚し、現在は5歳の男の子のパパでもある彼はバイセクシャルだ。「でも『Les garçons…』はヘテロのカミングアウト映画ではない。これは人を押し込める〈型〉や、アイデンティティの探求についての映画です」。公開中のジャリル・レスペール監督作『Yves Saint Laurent』では、天才デザイナーの庇護者で愛人のピエール・ベルジェを、にじみ出る育ちの良さを武器に好演している。(瑞)