売春客への罰金制度。

 人類史上一番古い職業といわれる売春は、肉体を一時貸す女に金を払う男がいるかぎり根絶できそうにない。最近ホモセクシャル男性や独身エリート女性、夫に満たされない女性に応える男娼(エスコートボーイ)も売春市場の10〜15%を占めているという。国内に売春婦は約2〜4万人いる。その80〜90 %は外国人、主にルーマニア、ハンガリー、アフリカ諸国、中国からの不法入国者だ。彼女らのほとんどはマフィアが国外から指図する売春網に依存する。
 サルコジ内相時代2003年に施行した売春の客引き抑制令により、彼女らはパリ環状道路沿いやブローニュの森に移るかiPhonを利用し、監視を逃れる。ビノシュがジャーナリスト役で出演したズモウスカ監督の『Elles  ラヴァーズ・ダイアリー』やオゾン監督の『Jeune et Jolie 17歳』でも女子高・大学生の売春を取り上げている。
 70年代の避妊薬解禁により女性が自分の体を管理し自分の意志で体を売ることも自由、しからば売春して何が悪いと、フェミニストの中には「国には個人の性についてとやかく決める権利はない」と主張するリベラル派と、売春は客による強姦であり、ヒモやマフィアの搾取だと糾弾する硬派に分かれる。モラリストといわれる人たちは、売春は女の奴隷化にすぎず、客に何をされても拒否できない屈辱と暴力に屈せざるをえないと叫ぶ。150年前ヴィクトル・ユゴーも「文明から奴隷制はなくなっても女性を圧する売春は存在する」と述べている。フランスは1946年に売春廃止の姿勢を明確にしており、1960年国連の「人身売買禁止」憲章を議会で批准している。
 12月4 日、ヴァロ=ベルカセム女権問題相草案の「売春客罰金制」法案を国民議会が可決(賛成267/反対138/棄権79)、来年4月に上院で採決。同法は売春婦を犠牲者とみなし、客に対し罰金1500€、再違反者には3750€を科す。未成年・障害売春婦の客には懲役3年+罰金4万5千€を科す。現行違反者の逮捕は難しく、暴行した客を売春婦が警察に告発するしかない。彼女らが売春から身を引くことを奨励するため、ヒモやマフィアを告発した外国人売春婦には6カ月の一時滞在許可を与え、月336€の援助金を給付。売春客の再教育指導も行われる。
 スウェーデンでは1999年以来、売春客罰金法(月給半額と懲役6カ月)を施行。以来、街の売春婦は半減したというがネットによる売春が増加、売春婦の負う危険性も増しているという。
 一方、2002年に売春を自由化したドイツには外国人を含め売春婦は約40万人、売春クラブも3500カ所、1日約100万人が利用し、欧州一のセックス王国に。経済でもセックス面でも繁盛するドイツを横目に、フランスには「売春は社会の必要悪」とみなす御仁も多い。〈Causeur〉誌11月号に売春擁護者が「卑劣な男(salopards)343人*」のマニフェストを掲載し、同法案に反対した。同法案の是非を問われた保守男性議員らの複雑な心境と居心地の悪さ !(君江)
* Nouvel Observateur誌(1971年4月5日号)に、ボーヴォワールが書いたマニフェスト「下劣な女(salopes)343人」が掲載され、ジャンヌ・モロー、ドヌーヴ他340人が「中絶した」と宣言したことをもじっている。
画像内フランス語:
「女の奴隷化に反対。売春に反対!」
「客は私たちを犯さない。あなた方が私たちの権利を犯している」

 

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