Lamarck-Caulaincourt界隈(18区)
造形作家のルノー・パタールさんが、ラマルク・コーランクールに越してきたのは3年前。それまでパリのさまざまな街に住んできたけれど、「もう離れられない。慌ただしい18区の喧噪(けんそう)から、不思議と切り離された平和なゾーンだよ」と絶賛する。
ここはパリで最も標高が高い地区。それに車も少ないから、「空気がキレイなのがはっきりとわかる」という。だから仕事の合間には、運動も兼ねて積極的に歩く。いたるところで出会う傾斜が急な階段は、お年寄りには大変そうだが、独特の景観を生み出し味わい深い。白亜に輝くサクレクール寺院に誘われ、モンマルトルの丘の上まで登りつめれば、眼下には見事なパリの全景が広がる。まさに「パリはわれらのもの」という気分だ。「モンマルトルは観光客も多いから、外国語がよく聞こえてくる。ディズニーランドにでも来たような非日常の気分が味わえるのも面白い」
観光客たちは、ひととおりモンマルトル観光を楽しんだ後は、たいていアンヴェールやアベス駅方面へと下っていく。閑静なラマルク・コーランクール側には、あまり降りてこない。「この辺、有名な建築物はあまりないからかも。近くにダリダ広場があるけど、それほど有名ではない。みんなダリダ像の胸ばかり触わるから、そこだけ色が変わって哀れだよ(笑)」
ルノーさんによると、観光客がいないということは、彼らを狙って一緒に移動をするスリ軍団も少なめであり、治安のよさがかなり保たれているという。住民層は30代くらいのBoboカップルや若い家族連れが目立つ。新しい店のオープンも絶えず、最近はヨガ教室やオーガニックのレストランも繁盛しているようだ。「住民たちは生活に対する要求レベルがとても高いから、自然淘汰され、必然的に質が高い店が残る。町は住む人の心の反射」
よく食べ、よく働き、よく眠るのにうってつけのラマルク・コーランクール。今宵もルノーさんは、この場所で明日の制作に向け、英気をしっかりチャージする。(瑞)
http://renaudpatard.net
●Encre de Chine
「時々、無性に寄りたくなってしまう大事な店」とルノーさんが語るバンドデシネの古本屋。骨太店長のセバスチャンさんは、移り変わりが激しいこの界隈で20年以上もお店を切り盛り。時代に媚(こ)びないアナーキーな品揃えが自慢だ。
月~土14h-19h。 日休。
51bis rue Lamarck 18e 01.4257.3101
●Hope Café
ラマルク・コーランクール駅すぐ近く。スープ、サラダ、ハンバーガーなどの食事もとれるオーガニック・カフェ。おすすめは野菜ジュースや、ぷるぷるの食感が楽しめる卵フリーの焼かないチーズケーキ。スタッフも親切。火~日 10h-24h(ただし日曜は夜休)。月休。
64 rue Lamarck 18e 01.4606.5440
●Bululu Arepera
ベネズエラ料理の店。テイクアウト可。とうもろこしのパンにチーズや鶏肉、卵などの具をはさんだ南米の伝統的なパン「アレパ」がある。インゲンやアボカドなど素朴な食材で優しい味。水~金12h-
14h30/19h30-23h、土日12h-17h。月休。
20 rue de la Fontaine du But 18e
01.4254.9625
古本屋で 掘り出し物を手にしたルノーさん。
連作『Miami Residencies』から。
今は亡き、歌手ダリダの胸像。
映画の名門校フェミスもある。