誰でも知っている世界的な大ヒット曲、ポピュラー音楽界のカリスマ・スター…、彼らを陰で支えたバックコーラスのシンガーたちにスポットライトを当てたドキュメンタリーが、モーガン・ネヴィル監督の『Twenty feet from stardom バックコーラスの歌姫(ディーバ)たち』だ。
記憶に新しいところでは、マイケル・ジャクソンが死の直前まで準備を進めていた幻のコンサートツアー〈This is it〉 でマイケルのパートナーに抜擢されていたジュディス・ヒル。
ローリング・ストーンズの『ギミー・シェルター』でミックとデュエットしたメリー・クレイトン。この時のことを現在のメリーとミック、双方が話す場面はケッサク。60年代初頭に女声ボーカルトリオ、ブロッサムズのメンバーとして一世を風靡(び)したダーレン・ラヴは、家政婦で生計を立てた時期を経てバックに復帰。本作の中で40年振りに他のメンバーと再会し歌うシーンはじ~んとさせられる。リサ・フィッシャーは、91~92年、ソロ・アルバムがヒットチャート1位、グラミー賞受賞という経歴。その後はストーンズとのツアー、スティングやクリス・ボッティとの共演で活躍している。「有名になるためなら何でもする人がいる一方で、歌うことのみを熱望する人がいる」とリサは語る。この映画で紹介される十数名のバックシンガーは、皆すごい才能の持ち主だ。スターを目指し挫折した人もいれば、一度つかんだ栄光にしがみつかなかった人もいる。でもとにかく彼女たち(彼も一人いるが)の人生には「歌」がある。そのことの幸せが伝わってくる。ミック・ジャガー、スティング、ブルース・スプリングスティーン、スティーヴィー・ワンダーなどの証言もナイス。(吉)