映画の中の、こんなパリが大好き。

昼顔 / 素敵な歌と舟はゆく

Belle de jour
Belle de jour

 

Belle de jour 
昼顔 1967
 ルイス・ブニュエル監督『昼顔』の主人公セブリーヌ(カトリーヌ・ドヌーヴ)は、何不自由なく暮らす若妻。しばし自分の中に潜む倒錯的な欲望に突き動かされて、高級娼館の扉を叩くことになる…。セブリーヌの暮らす8区メシーヌ通り23番地は、モンソー公園近くの瀟洒(しょうしゃ)なオスマン建築(写真)。ブルジョワ然としていて、ドヌーヴの近寄りがたいイメージとピッタリ。一方、午後2時から5時まで娼婦として通う「マダム・アナイスの館」は13区の雑多な一角。劇中、呪文のように唱えられる「11 Cité de Jean Saumur」。実は架空の住所で、実際はアルバン・カショ広場1番地の建物が娼館として撮影された。今では閑静な一帯だが、昔はダークなイメージだったに違いない。
 セブリーヌが客を外で迎えるシーンも忘れがたい。ブローニュの森の高級レストラン「ラ・グランド・カスカード  La Grande Cascade」のテラスで死体愛好家(!)と落ちあい、馬車で館に向かう…。冒頭から、現実とセブリーヌの妄想が交錯し、観客は振り回されっぱなしだ。「娼婦になることで自己解放する主人公の二重生活は続かなかった…」という設定。今となっては古臭いが、サンローランの衣装に身を包む、まばゆいばかりに美しいドヌーヴは一見の価値あり。マゾ女のたわ言では終わらない、倒錯世界も満載だ。ラスト、シャンシャンシャンと鳴り響く鈴の音は清々しいが、同時に不気味な後味を残す。シュールで変態趣味なブニュエルの確信犯的作品である。(咲)

Adieu plancher des vaches
素敵な歌と舟はゆく 1999
 自然に包まれた優美なお城。ここには実業家の母、酒好きでのん気な父(イオセリアーニ監督自身が好演)、化学実験にいそしむ息子、退屈そうな幼い姉妹、さらに使用人や動物たちが住んでいる。ある日、息子は上等なスーツを脱ぎ捨て、ジーパン姿になってボートに乗り込んだ。セーヌ川の流れに揺られ、たどり着くのはパリ。そして気の向くまま赴くまま、必要もないのに掃除や皿洗いのアルバイトに精を出す。
 彼のまわりには浮浪者軍団や、金持ちに扮する貧乏青年、女給の娘、ドジな黒人ら、それこそ無数の登場人物が現れては消え、また現れる。人々は路上で、河岸で、カフェで言葉を交わし合う。時に心通わせ意気投合するし、だましだまされて問題を起こすこともある。老いも若きも、貧乏人も金持ちも、フランス人も外国人も、ここでは徹底的に相対化されている。みんな愚かでちょっといとおしく、どこまでも人間的な存在だ。グルジア人の映画作家オタール・イオセリアーニが描く20世紀末のパリ人間喜劇は、その非情と詩情が交錯する不可思議な味わいが心地よい。
 「人間はこんなもの、そうは思わんかね?」と、幸福なペシミスト監督が、お酒片手にイタズラそうに微笑む姿が目に浮かぶ。
 本作には観光地然としたよそ行き顔のパリはない。だが30年当地に住んでいる監督の審美眼にかなった、隠れ名所が随所に見出せる。例えば2区のパン屋〈Au Panetier〉や11区にあるカフェ〈Le Bistrot du Peintre〉(写真)はアールヌーヴォー建築がとびきり美しい穴場。ふらっと立ち寄ってほしい。(瑞)
Adieu plancher des vaches

Adieu plancher des vaches
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