Mensch !(メンシュ! まったく、もう!) 全部で320キロもあるの!

 ポンピドゥーセンターのすぐ脇にあるドイツ語書店〈Marissal-Bücher〉に足を踏み入れると、店主のペトラ・クランジェルさんが積み上げられた段ボールの山と格闘していた。ドイツから前日到着するものが、渋滞などで遅れて届いたらしい。その間も電話が鳴り続け、ドイツ語での対応に追われる。パリやフランクフルトの国際ブックフェアにも出品しているため、準備にも忙しい。
 カフカやヘッセなどのポスターが掲げられた店内はドイツ語の原書、語学書や辞書、そして仏訳されたドイツ関連の書籍のコーナーに分かれている。とくに語学教材の揃えは豊富で、色々なアドバイスも受けられるから、ドイツ語を始めるならここに足を運ぶといいかもしれない。
 1981年の開業以来、〈Marissal-Bücher〉はパリにあるドイツ語書店として中心的な役割を果たしてきた。客層はやはりドイツ語学習者が多いようだが、個人客だけでなく重要な法人客もいる。図書館はもちろん、16区のゲーテ学院などの語学学校、ルーヴル美術館の資料部などからも注文が入るという。
 他の外国語書店と同様、ドイツ語書店でもアマゾンなどインターネット上の販売サイトがやはり脅威となっているようだ。ネットのおかげで、本国の卸業者との受発注など店の業務がやりやすくなったのはありがたいが、陸続きのドイツともなれば送料や配達日数も手ごろで、大量販売による値下げもあるから、客は販売サイトへと流れていってしまう。旧来の書店の販売形式で太刀打ちすることはできない。事実、モンマルトルにあるもう一軒の同業者も近々店をたたむという。
 だが、母国語の本を手にとって選ぶ楽しみは代えがたいもの。在仏のドイツ人たちもよく店に来る。隣国ゆえに人の行き来も多いから、結ばれる男女も当然多い。〈Marrisal-Bücher〉の大事なお客さんには、そんな独仏カップルの子供たちもいる。児童書の棚の前でエンデの『モモ』を見つけて「懐かしい」と喜んでいると、「それは、もう古典の部類よ」と言って新刊の絵本などを見せてくれた。
 「パリだからよく売れるドイツ語の本はあるか?」と聞くと、待ってましたといわんばかりにショーウィンドーの中から一冊の本を取ってくれた。独仏の日常文化の違いを紹介したARTEのテレビ番組〈KaramboLaGe〉を書籍化したもの。独仏カップルがよく買っていき、楽しむのだという。
 「さて」と、段ボールの山を前に背筋を伸ばすぺトラさんの横顔を見ながら、「たしか活版印刷を発明したグーテンベルクもドイツ人だったな」などと思ってみたりした。(康)
Marissal Bücher-Librairie allemande
 42 rue Rambuteau 3e  01.4274.3747
●おすすめのレストラン
Le Stub :  31 rue de Richelieu 1er
01.4260.0985  www.lestube.fr
ぺトラさんいわく「高級ファストフード感覚で典型的なドイツ料理が食べられる」。ブレッゼルとソーセージがついた6€のビールセットもあり、仕事の後の一杯に最適。


母国語で読むということ〈ドイツ語編〉