コロンビア出身のルシアさんはヴィオラ奏者。ピアニストの母と作曲家の父のもとで育った彼女は、高校卒業後フランスにやって来て、CNSMパリ国立高等音楽院を卒業した。得意なのはバロック音楽だが、クラシック全般のオーケストラから室内音楽、現代音楽のオーケストラと幅広いジャンルで演奏している現在の環境は、恵まれていると語る。
ルシアさんが住むのはベルヴィル公園の上。パリ全景を見渡す丘で、7月14日の航空パレードはパリの東西端から端まで堪能することができる特等席だ。19区国立音楽院の寮、10区の市役所界隈を経て2005年よりこの丘に住み始めたそうだが、やっと自分の住みたかったパリにたどり着いた気がした、と彼女はいう。
1956年作の名作映画『赤い風船』は、このベルヴィルの丘からメニルモンタン地区で撮影された。その頃、この界隈は実に活気溢れる庶民の街で、赤い風船が通り過ぎた街角はどこも生き生きとして、映画には魅力が溢れかえっている。その後、70年代後半頃からなのだろうか、周辺は暗く治安の評判もあまりよくない、長いトンネルに入る時代が続く。少なくても15年前のピア通りあたりは危険な臭いが大いに漂っていた。
ところがこの界隈は、当然ながらボボたちによって変えられた! バーやレストランはもちろん、数年前から本屋、美容院、アトリエ、ブティックらがとてもいい感じで増えてきたのだ。子供の遊べるアトリエや公園に、2歳と10カ月の二人の子供をもつルシアさんも大満足。彼女の音楽家仲間、絵描き、建築家の友人たちも多く引っ越して来たし、ビオラの弓の手入れをしてくれる弓術家のアトリエも近所にできた。まだまだこれから小洒落た店はどんどん増え続け、第二のモンマルトルとなる日がいつか来るだろう。
風通しが良く日当りが良くてパリの中心より少し空気が綺麗な丘を横切り、ルシアさんは近々オーケストラで演奏するモーツァルトのリハーサルに向かった。(久)
●O’Paris
店名は「Hauts de Paris パリの高いところ」の意味。何の変哲のない静かなカフェだったが、全改装でCOZYな空間となり賑わっている。定期的ジャズコンサートも人気。カフェ、バー、食事とも良心的な料金。テラスは障害物なしパリ全景で気持ち いい。ルシアさん行き付けのカフェ。8h-翌02h、土日は9h15から。
1 rue des Envierges 20e 01 4366 3854
●Place du Guignier
ルシアさんが以前住んでいたところ。広場全体に可愛い牧歌的な雰囲気があるのがお気に入り。街灯やベンチはどこかペイネのイラストを思わせる。広場の真ん中にあるパリ下水道出入り口の建造物は別世界へ導いてくれる怪しい存在感。
●La Cartouche
20区は5区を抜いてパリで最も本屋さんが多い区なのだそう。長さ100m程のジュルダン通りに3店、すぐ下の広場にも1店と本屋は多く目につく。「地元商店を応援するため大型店舗には行かず近所で本を買うの」とルシアさん。ここは美術、建築、写真、古書などを中心に扱う。
月〜土 10h-13h/15h-19h。
7 rue du Jourdain 20e 06 8098 2888
パリを 一望する丘。
ビオラ奏者のLucia PERALTAさん。
『赤い風船』の少年が住んでいたのは右の建物3階左から二つ目の窓。その数軒先にルシアさんは住んでいる。