フランス映画賞レースの最高峰が毎年2月に開催されるセザール賞。今年はミヒャエル・ハネケ監督の『愛、アムール』が五冠に輝いたが、本作で主演女優賞を獲得したのが、86歳になるエマニュエル・リヴァ。受賞スピーチでは、スタッフと仕事への感謝を込め「映画は分かち合いの仕事」と語った彼女。生放送で時間配分を気にする司会者も、彼女のスピーチだけはゆったりと見守っていた。
出身はフランス北東部のヴォージュ県。思春期に演劇に興味を持ったが、塗装職人の父は娘が芸術の道に進むことを望まない。意を決して、演劇を学ぶべくリヴァが単身パリに来たのが26歳の時。舞台女優として活動を始め、やがて芝居を見たアラン・レネから映画出演のオファーを受ける。こうして32歳で『二十四時間の情事』(59)に主演し、有名俳優の仲間入り。ジョルジュ・フランジュ監督の『Thérèse Desqueyroux』(1962)では、ヴェネチア映画祭の女優賞も受賞。
だがスターシステムを拒否し、出演オファーを断り続けるうちに映画の仕事が激減、主に舞台が活躍の場に。そして時は流れ今回、脚本に惚れ込んだ『愛、アムール』の出演を自ら熱望し、銀幕女優として再び表舞台に華々しく返り咲いたのだった。その他の近作は『Le Skylab』など。(瑞)