ナチュラルワインの「伝導師」、オリヴィエさん。

写真のアルザスのピノ・ノワールは クリスチャン・ビネール氏の手によるもの。
写真のアルザスのピノ・ノワールは クリスチャン・ビネール氏の手によるもの。
添加物のはいったワインは、体が受け付けなくなってしまいます。

 店主のオリヴィエ・カミュさんは、パリのナチュラルワインを語る上で欠かせない人物。愛好家からこの道の「伝導師」と呼ばれることもあるほどの、長い実績を誇る。
 オリヴィエさんがナチュラルワインに目覚めたのは1980年代のこと。すべては、意欲的なワイン農家との出会いから始まった。ボージョレのマルセル・ラピエール、ジュラのピエール・オヴェルノワ、そしてロワールのピエール・ピュズラ。今では「巨匠」と評される、彼らのワイン畑を訪ね歩いた。土を耕して豊かな土壌をつくり、そこで最高の原料をつくること。そして、それをゆっくり丁寧に醸造していく、その一連の流れに共鳴したという。そして、その豊かな味わいは、「添加物の力を借りて乱暴につくられたワイン」とは一線を画するものだった。「魚や肉を料理する時、低温でじっくり火を入れていくのと同じ。ワインも、穏やかに醸造することで風味が出るということを理解したのです」
 1988年には、料理担当のラケルさんと共に、ワインバーの〈Baratin〉をオープン。ここでワインのセレクトを一手に引き受けたオリヴィエさんは、新しいワインの世界をお客さんと共有する日々を送ることになる。「それは、皆をまきこむ冒険でした。当時は、私自身をふくめて、ナチュラルワインに興味がある人たちも、実際のところ、知らないことが随分あったものです。好奇心旺盛なお客さんたちと、夜な夜な大いに意見を交換しあいました。そこには規制などはなく、どこまで斬新なものが受け入れられるのか、それを試すラボラトリーのようなもの。その反応をワイン農家に伝えて、また新作を試す…、という繰り返しの日々でした」。開店2年もすると、この個性的なワインバーはいよいよ活気づき、今もその人気は衰えることがない。
 90年代以降、ナチュラルワインの知名度はぐんぐんとあがってきた。その背景には健康志向もあるが、ワイン自体の質が認められてきたという側面もある。オリヴィエさんは、「一度ナチュラルワインを覚えてしまったら、後戻りはできない」と言う。「しぼりたてのフレッシュ ジュースを飲んだら、殺菌されて、保存料のはいっている大量生産のジュースが飲めなくなるでしょう。それと同じで、添加物のはいったワインは、体が受け付けなくなってしまいます」
 オリヴィエさんがワインカーヴ兼ターブル・ドットの〈Chapeau Melon(山高帽)〉をオープンしたのは2003年のこと。店内の壁には、全国から集められたワインが並ぶ。「最近は、若い世代が活躍するようになってきて、これだけ多くの種類が扱えるようになったんです」と満足気なオリヴィエさん。現在では料理も担当していて大忙しだが、つきあいのある100ほどのワイン農家には、今でも欠かさず足を運ぶという。(さ)


Chapeau Melon

Adresse : 92 rue Rébeval, 75019 paris
TEL : 01.4202.6860
ターブル・ドットは 水〜日20hより 日曜以外は 34€のコースのみ。 ワイン販売は、火16h-20h、 水土11h-13h/16