大げさに神の名を持ち出す信心深さを盾に、金持ちオレゴンから絶対なる信頼を勝ちとるタルチュフ。その信心がどれほど偽物であり、オレゴンをペテンにかけその富を利用しようとしているかを、オレゴン以外の家族は皆気づいている。しかしオレゴンは「家族よりも大切な人」として、婚約者がいる娘を強引にタルチュフへ嫁がせ、全財産をタルチュフに譲ることまで実行しようとする。一方タルチュフは、オレゴンの娘をめとるのと同時にオレゴンの妻まで寝取ろうと試みるのだが…。
人間の愚かさ、偽善さ、善良さを描きながら悪が勝つかとはらはらさせ、最後に大きなどんでんがえしを持ってくる。王や宮廷を喜ばせようと、自信を持ってモリエールが発表したこの劇は、王から賞賛されたにもかかわらず、信心と信者を揶揄(やゆ)する、として教会から抗議が起き、結局一般への上演は禁止されてしまう。
誰の目から見ても愚か者のオレゴンと、誰もが警戒してしまいそうなうさんくさいタルチュフを演ずるのが、フランス映画、演劇界の重鎮であるクロード・ブラッスールとパトリック・シェネという二人の性格俳優。この二人がどう「対決」するかが見物、と私も楽しみだった。演出のマリオン・ビエリーは、シェネの癖のある演技を上手く利用して、タルチュフ像をさらにつかみどころのない怪しい男として描き、反対にブラッスールのオレゴン像をモリエールに忠実に古典的に描くことに成功している。娘の教育係であるドリーヌを演じるシャンタル・ヌーワースがとてもいい。彼女の貫禄とメリハリのある演技には観客から喝采が送られていた。(海)
Théâtre de Paris :15 rue Blanche 9e
01.4874.2537 www.theatredeparis.com
火〜土20h30、土16h。18€-48€。