観客92万人を集め、イラン映画としてフランス最大のヒット作となった『Une Séparation(別離)』。この成功後、アスガー・ファルハディ監督の作品発掘が止まらない。現在も長編二作目『Les Enfants de Belle Ville』が、ブームにのり公開中だ。彼の作品には、常に、罪や不道徳の曖昧な境界線でもがく人間の姿がある。
ファルハディはイラン第三の都市イスファハンの近郊生まれ。幼い頃から読書好きで、チェーホフ、ヘミングウェイら海外文学に親しんだ。
10代半ばから短編映画を撮り始め、名門テヘラン大学では映画と演劇を学ぶ。2003年に『Dancing in the dust』で長編デビュー。続いて04年に『Les Enfants de Belle Ville』、06年に『La Fête du feu』を発表。09年には『A propos d’Elly(彼女が消えた浜辺)』がベルリン映画祭で銀熊賞を受賞し、一流監督の仲間入り。そして2010年の『Une Séparation』の大成功。米アカデミー外国語映画賞など世界で80以上の賞に輝く。ジャファール・パナヒら多くのイラン人監督が当局の監視下で苦労を強いられている中、検閲網を涼しい顔ですり抜けるのがファルハディ。彼の作品は国内でも大衆的な人気を誇っている。
次回作はマリオン・コティヤールが主演予定。女性の描写に才を発揮する監督だけに、期待が高まる。(瑞)