ジョルジュ・サンドの食卓から 7

 『魔の沼』(1846年)は、サンドが42歳の時に書いた作品。「田園小説四部作」の1作目であり、広くフランス人にも愛されている。舞台は例によってサンドが子供のころから慣れ親しんでいる、自然豊かなフランス中部のベリー地方。まじめで働き者の農夫の青年ジェルマンと、貧しいながらも気品を保つ若い娘マリの恋物語は、どこまでも清らかで、みずみずしく、読む者の心まできれいに洗ってくれそう。
 亡くなった妻の両親からすすめられ、遠くに住むある未亡人との一種のお見合いのために旅をすることになったジェルマン。そこに、偶然、同じ方向に用事があるマリが一緒に旅をすることになる。道中、たちこめる霧にみまわれ森で迷子になったふたりは、大きなカシの木の下に避難。そこで、ジェルマンはこの16歳のマリの機知に舌をまくことになる。「よちよち歩きをするようになって以来、牛追いだった」ジェルマンが、すっかり途方にくれているのを片目に、マリは、てきぱきとたき火の用意を。そればかりか、ジェルマンの荷物の中にはいっていたウズラのことを思い出し、「私が、煙のにおいをつけずに灰の中で焼きましょう。あなたは野原でヒバリを捕まえて、石の中で焼いたことがないのですか?  ああ!  そうでした!  あなたが羊の番をしたことがないのを忘れていました!」(持田明子訳)と言いながら、ジェルマンにウズラの羽をむしらせ、これも器用に調理。極めつけは、パンの代わりにと差し出した焼き栗!  道中、枝からもいだ栗をとっておき、すぐに火の中に入れておくという知恵と心配りには、ジェルマンではなくても、思わず感動してしまう。こうやって、まだ少女とも呼びたくなるような女性が主導権をとっているあたりは、サンドらしい筋書きだとにんまり。彼女自身、誰よりも魅力的な男前な女性であった。(さ)

 

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