ジャック・ドゥミのデビュー作にして珠玉の名作『Lola ローラ』(1961)がリバイバル公開。初めて観る人も、もう観ている人も、この機会に是非! 絶対おすすめ! 監督の故郷、港町ナントを舞台に三つの初恋の物語が微妙に折り重なり合いながら流麗につづられる至極の映画だ。
アメリカの水兵が顧客のキャバレーの踊り子ローラ(アヌーク・エメ)には、初恋の相手ミシェルとの間にできた7歳になる男の子がいる。ミシェルは7年前にローラこと本名セシルの前から姿を消した。セシルは彼をずっと待っている。ローラ(セシル)が米兵フランキーと付き合うのも彼がミシェル似だから。一方、15年前の初恋の相手であるセシル(ローラ)と道でばったり再会したロランは、その思いを彼女に告白するが、「あなたはただの友だち。私の恋人はミシェルをおいて他にいない」と振られてしまう。
そのロランは、本屋でデノワイエ母娘とふとしたきっかけで知り合う。14歳になる娘の名前がセシルだったことも手伝ってロランと母娘の交流が始まる。「初恋は特別なもの」という母とロランの会話を耳にした14歳のセシルは、偶然仲良しになった米兵フランキーを追って家出してしまう…。
そして7年振りにミシェルがナントの町に帰ってくる…。
ままならぬ恋心、偶然の出会い、別れ、再会、そして旅立ち。携帯電話もメールもスカイプもなかった時代の恋物語は、何とも優美でとてもロマンチックだ。ラウル・クタールによるカメラワークと本当に美しいモノクロ映像、そしてまた音楽のミシェル・ルグランとドゥミ監督の初コラボを祝福しないわけにはいかない。『シェルブールの雨傘』『ロシュフォールの恋人』へ連なるドゥミ映画の原点、ここにあり。
来春には、シネマテークで大規模な『ジャック・ドゥミ展』が開催される。(吉)