6月28、29日に開催された欧州連合(EU)首脳会議で、「成長協定」の合意がなり、オランド大統領の推進する政策が一歩前進した。成長協定は、欧州投資銀行への資金注入や、インフラ整備などを担う欧州構造基金、欧州開発プロジェクト債発行などによって、EU圏内総生産の1%にあたる1200億ユーロを圏内の経済成長のために支出することを定めたもの。さらに、ユーロ圏内の全金融機関を一元的に監視する制度「銀行同盟」に向けた取り組みを年内にも開始するというメルケル独首相の条件のもと、欧州安定メカニズムが加盟国政府を通さずに、危機に陥った銀行に直接、資金注入できる妥協案を同首相から引き出した。
加えて、イタリアとスペインの国債をEU救済基金が買い支えることでも、両国首脳がメルケル首相から合意を取り付けた。財政危機に陥った国の緊縮財政努力を求めるメルケル首相の姿勢に対し、加盟国の連帯を高め、財政債務を共有するというオランド大統領の考え方が勝利をもぎ取った形。だが、こうした決定事項が今後うまく機能していくかどうか、まだまだ行方は不透明だ。(し)