活発でおしゃべりなアニさんと、会ったはなから「風邪で声が出ないから話せない」と言うジェロームさん。「初対面の印象は記憶にない」、互いの長所や短所を聞くと「答えない」とガードが堅い。不器用な夫を、奥さんがとびきりの社交性でカバーしている印象だ。
25年前、ミニテルのチャットで出会った。当時、高校最終学年だったアニさんは、建築学部の学生ジェロームさんに興味を持つ。初対面は近所の公園で。Yop(飲むヨーグルト)をうっかり洋服にぶちまけた彼の姿に、思わず吹き出してしまった。その後、彼は写真学科に移り、彼女は経済学の博士課程に進む。その間、結婚。ともに旅行好きで、世界を歩きながら見聞を広めてきた。新婚旅行はインドにバックパッカーで7千キロを移動。アニさんの研究課題が「村、大地の管理」だったので、1年間カメルーンに住んだこともある。帰国後は、アルメニア人のコミュニティーがあるイシー・レ・ムリノ市で暮らす。今では11歳、7歳、1歳の子供たちに恵まれた。「私たちは異なるカルチャーで育ったから、やり方が全然違うの」とアニさん。顕著な例は子育てにでる。イスタンブールで生まれ、アルメニア人の父とトルコ人の母をもち、4歳でフランスに移住した彼女は、時間におおらかで細かいことにはこだわらない。一方、両親がノルマンディー出身で厳格な家庭に育った彼は、規律に厳しく、パリ出身なのに「ノルマンディー人」と自覚するほど。でこぼこ夫婦。だが二人に通底するのは、正直で愛情深いところだ。
現在、ジェロームさんは高齢者にパソコンを教え、修理や販売もする。アニさんは企業の育成システムの開発職。「彼はサラリーマンで、私はフリーランス。だから家でも仕事ができるし、子供の面倒を見ながら続けられるの」。二人は夫婦だけの時間も大切にしている。「休み中は、いつもノルマンディーに住む両親が子供を預かってくれるんだ。冬の間、僕らはパリ郊外にいるけれど、展覧会や日曜大工で充実した時を過ごしているよ」(咲)
これから相手に期待したいことは?
「何もない。今後も続けるのみ」(ジェ)
「セキュリティー。固く結ばれた絆」(ア)
前回のバカンスは?
「バスク地方ビアリッツ。海と山があって、食べ物がおいしいし、スペインに近い。それに親友が住んでいるの」(ア)
夢のバカンスは?
「友だちや子供たちと、トルコの海に近い小さな町で。何もしない滞在がいいな」 (ジェ)
「旅の最後はイスタンブールで締めくくりたいわ。ショッピングや散歩をするの」(ア)
最近、二人で行ったイベントは?
「1年前から出かける機会がめっきり減ったけれど、カルチエ財団で開かれた北野武展は子供連れで楽しめたよ」(ジェ)
お気に入りのレストランは?
Primo Piano(ボン・マルシェ1階、26-32, rue de Sèvres 7e )
「野菜グリルとモッツァレラ・ブファラは必ず頼むわ。サラダ類も最高よ。私たちは冷凍食品は絶対食べないから」(ア)
カップルとしての満足度を5つ星でいうと?
★★★★「満点とはいえない。何か欠けていなければ」(ジェ)
★★★★「5つ星あげられる夫とは、もっとお金持ちであること。それ以外、私はとても幸運だわ」(ア)
カメルーンで ジェロームさんが撮ったポートレート。