故・黒澤明監督のフランス語通訳を長年つとめたカトリーヌ・カドゥ氏。彼女が監督したドキュメンタリー映画「黒澤、その道」が、間近に迫る東京国際映画祭でただ一度、上映される。
彼女がこのドキュメンタリーを作ろうと最初に発想したのが、2009年のヴェネツィア映画祭での黒澤生誕百周年のシンポジウム。以来15カ月を費やして、世界を代表する現代の映画監督たち、ベルナルド・ベルトルッチ、ジュリー・テイモア、テオ・アンゲロプス、アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ、アッバス・キアロスタミ、塚本晋也、宮崎駿、ジョン・ウー、マーティン・スコセッシ、クリント・イーストウッド、ボン・ジュノ(登場順)を取材するために、パリ、ロンドン、東京、ソウル、北京、ロサンゼルス、ニューヨークを駆け巡った。そして、今年5月のカンヌ映画祭で世界初上演された。
タイトルとなった「その道」とは、黒澤監督が切り開き、今も世界中の数多くの映画人が歩み、未来へと向かう道、といったいくつもの意味が込められている。「道って、たとえば柔術が柔道になったように、かしら…」と「姿三四郎」を取り上げて話すカドゥ氏は、今も黒澤監督と一緒に「その道」を歩いている。
「黒澤監督は、映画評論家たちには大先生かもしれないけれど、実際に活動する映画人にとっては今も共に歩む人なんですよ」と語るカドゥ氏だが「理想的には75分くらい長さが欲しかった」とのこと。
プロデューサーを務めた吉武美知子氏は、インサートした黒澤映画の再使用料に苦労し「映画などは、人類共通の文化遺産として使用目的によってはパブリック・ドメインにすべきではないかしら。あるいは再使用料をしかるべく考慮するとか…」との意見もこぼす。
今回、東京国際映画祭で、日本でただ1回上映される機会は、本当に貴重なのだ。決して見逃してはいけない! (慎)
10月24日(月)17:30〜 東宝シネマ・六本木ヒルズSalle 5 にて。