一見、透き通る色白の肌が印象的な«お嬢様女優»に見えなくもない。だがひとたびスクリーンで動くヴァレリー・ドンゼッリを見れば、意志的な女性特有の波動を感じてしまうのだ。2011年はまさに彼女の当たり年。カンヌでは『La guerre est déclarée』『En Ville』『Pourquoi tu pleures』などの出演作が話題に。ちまたでも『Belleville Tokyo』『L’Art de Séduire 』と公開作が目白押しである。
1974年生まれのイタリア系フランス人。建築の勉強をしていたが、進路変更して女優を志す。2001年に映画『マルタ…マルタ』のヒロインに抜擢。その後も女優業に邁進(まいしん)するが、受刑者の夫を待つ女を演じた映画『7 ans』のように、世間の監督はドンゼッリに暗めの世界観を与えがち。そんな状況に抗ってか否か、いつしか彼女は自己流で映画制作を模索するようになる。2008年に当時のパートナー&俳優のジェレミー・エルカイムの励ましで初短編『Il fait beau dans la plus belle ville du monde』を完成。翌年には初長編『La reine des pommes』に着手。女優の遊びをはるかにしのぐコメディタッチの私的映画として評判に。本作の成功でプロデューサーも才能に太鼓判を押し、続く『La guerre est déclarée』の製作につながった。現在最も期待される若手女流監督の筆頭に躍り出た。(瑞)