『狂気のまわりに』

Autour de La folie
「親愛なる先生、私は先生の手の中に我が身を置きます。どうぞ好きなようにしてください…」。舞台の上には椅子がふたつだけ置いてあり、そのうちのひとつに若い男性が頭を抱えて座っている。自分を悩ませる幻覚についてこの若い男性がとうとうと打ち明ける相手は精神科医らしいが、医師の姿はない。精神科医は彼の幻覚の一部なのか、それとも私たちの目に見えないだけなのか…。
『狂気のまわりに』というこの舞台を観た後にまず考えたのは、「狂気」とは一体何か? ということだった。広辞苑で引くと狂気とは「気がくるっていること。正常でないこと」とある。フロベールの『狂人の手記』、モーパッサンの『狂人の手紙』、ロートレアモン伯爵の『マルドロールの歌』、シェイクスピアの『リチャード3世』など、明らかに人間の狂気を扱った作品から抜粋された文章が、27歳の役者アルノー・ドニの迫力ある演技で私たちに迫ってくる。そしてむしゃくしゃした時に読むとそのひねったユーモアに怒るよりも笑ってしまうようなミショーの詩Mes occupationsや、20世紀前半に活躍したドイツの寄席芸人ファレンティンの描く、過度に神経質な人物の独り言などには客席からも笑いがもれる。最後に引用されたÇa tourne pas rondという歌の歌詞を思い出しながら、狂気と正気はやっぱり背中合わせなのだと気づき、背筋が寒くなる。
 一人の人間が正常かどうかなんて誰がどうやって判断するのだろう? 私たちは常に自分を判断基準の中心に置いてはいないか? ­すると私だってあなただって、すでに他人から見ればこの「正常」という基準から外れているかもしれないのだ…。 10/16迄。(海)


Lucernaire

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