エヴァ・ジョリ(67)が、7月12日、来年度大統領選挙に向けた欧州エコロジー・緑の党の予備選挙で、58.16%を獲得、正式に候補者として指名された。対立候補のニコラ・ユロ(56)は、自然を紹介するテレビ番組『ウシュアイア(チリにある世界最南端の都市の名前)』の製作と司会で一般市民の間にも知名度が高く、優勢とみられていたが、反原発の姿勢が明確でなかったことや、予備選挙直前に中道派のジャン=ルイ・ボルローへの共感を示したことなどが敗北につながったようだ。ノルウェー生まれのジョリは、フランス大統領選挙の候補になった喜びを「私は、私自身の意志と信条でフランス人です。私のなまりはフランス文化が世界中に行き渡っている証(あかし)です」と語った。
エヴァ・ジョリは、1943年12月5日オスロで生まれる。父は制服工場で働く洋裁師で、労働者街で育った。18歳の時にミスノルウェーの3位に選ばれる。それと同時にフランスへ。1967年、ベビーシッターとして住み込んでいた家庭の長男、パスカル・ジョリと結婚し2児を出産、フランス国籍を取得。内装デザイナーをしながら法学部で学ぶ。1980年、司法官試験に合格し、翌年、38歳でオルレアンの検事代理に就任。彼女の名前を一躍有名にしたのがエルフ疑惑。政財界の圧力に屈しない取り調べで、1996年7月にはエルフ社のロイック・ルフロック=プリジャン社長を拘置し、有罪判決にこぎつける。政財界の復しゅうを避けるため、そしてまたエルフ疑惑中に、夫が自殺したこともあったのだろうが、ノルウェーにいったん戻る。フランス帰還後も司法界で活躍。2008年10月、欧州エコロジー党に加わり、2009年6月、欧州議員に。
大統領候補に選ばれた直後の7月14日、ジョリは、「(革命記念日の)軍隊行進を、小中学生、学生、シルバー世代が(…)彼らを結びつけている価値観を祝いながら行進する市民行進に替えることができるのでは」と発言。この発言に怒ったフィヨン首相は「かの夫人は、フランスの伝統とかフランスの歴史とかフランスの価値とかについて古くからの知識を持っていない」と彼女の二重国籍を批判する発言。これに対し左派陣営は、軍隊行進是非では分裂しながら も、首相の発言を「差別発言」と強く抗議。ジョリ自身も「私は50年フランスに住んでいるからフランス人です。それにバイキング船から下りるつもりもない」と高々と宣言。知名度のなさが欠点とされていたジョリだが、この一件で一挙にマスコミの脚光を浴びた。(真)