体格、雰囲気とも正反対の凸凹カップル。二人を結びつけたのは、そろって1970年2月11日生まれというひょんな偶然だ。職人気質の肉屋ティエリーさんと、良妻賢母の愛さんは、来月で結婚10年を迎える。出会いは2000年6月。ともにダンス愛好家だった二人は、バンセンヌの森のダンスホール〈シャレ・デュ・ラック〉で巡り合う。当時、精肉業国立高等学校の先生だった彼と、フランス国立科学研究センターで研究助手をしていた彼女。「30歳だったから、そろそろ家庭を。子供を持つなら少し焦らなきゃと思っていたんです」と愛さん。出会って約1年後に結婚し、3人の子供をもうけた。その間、ティエリーさんはMOF(国家最優秀職人賞)を受賞。愛さんは翻訳本『日本、ぼくが愛するその理由は』を上梓。一見、順風満帆のようだが、不満を抱えていた当時を彼は思い出す。
「あの仕事は進歩がなく、給料も上がらない。一流の肉屋として認められるために、いつもコンクールに出場していた」。休暇も返上してコンクールに情熱を注いだ。「肉命で、すごいパワーで仕事する人ですが、子育てには協力してくれなかった」と愛さんはそっと語る。
2年前、一念発起し肉屋を開業。パリから60キロのコルベイユ=エッソンヌ市に店舗とつながる、庭つきの一軒家を購入した。愛さんは研究職を辞め、肉屋の女将(おかみ)に転身。「会計と電話番が主な仕事。もちろんインテリジェンスの部分で満足できない点はありますよ」と言う。肉職人として誇り高い彼は、こう語る。「お客が神様なら、僕は最上の技術でおいしい肉を提供する天皇」。大型マーケット拡大や、クリーニング店の閉鎖で、界隈の商店全体の景気が落ちた時もある。今は休日はあってないようなもの。愛さんには店の切り盛りの他、7、5、2歳の子供の世話が、ずっしり肩にのしかかっている。彼女のしなやかさは、成瀬巳喜男が描いた女性像のようなユーモアと哀愁を漂わせる。(咲)
これから相手に期待したいことは?
「今後10年は猛烈に働き店の設備を最新式にし、夜8時には仕事が終わる暮らしを手に入れよう」(テ)「定年後パリにステュディオを買ってもらう。別々に暮らしてたまに会うのがいい」(愛)
前回のバカンスは?
「去年の夏、南仏グロ・デュ・ロワへ一週間。はじめて義両親のお宅には行かない休暇でしたよ」(愛)
夢のバカンスは?
「地中海クラブ。すべてお膳立てされた中、ヤシの木の下に寝転んで、何も考えなくていい」(テ)「穏かな日、実家の縁側でゴロゴロすること。母が干してくれた布団に寝転んで」(愛)
最近、二人で行ったイベントは?
「3年前、ブルターニュ地方へMOF受賞者を祝福する精肉業連盟の会議に呼ばれた2日間。帰りにゲランドの塩田を見学」(愛)
お気に入りのレストランは?
Dragon d’or (63 rue Feray, Corbeil-Essonnes 01.6496.2201)
「店から目と鼻の先の中華料理店は家族連れでいけるんだ」(テ)
カップルとしての満足度を5つ星でいうと?
★★★★★「僕の職業に溶け込んでくれた。素晴らしい母でもある」(テ)
★★1/2「短気だしすぐ怒るから、いつも火消し役で疲れるが、まじめで働き者で頼りになることは認める」(愛)
結婚写真アルバム。愛さんの友人で雑誌フライデーの記者が撮った写真800枚!
Thierry DUTERTE
Adresse : 38 rue Feray , 91100 Corbeil-EssonnesTEL : 01.6496.0301
肉はもちろん、パテやリエットなどシャルキュトリー類もうなるほど極上の味。