ナントで1995年にルネ・マルタン氏の発案から始まった全く新しいクラシックの音楽祭、ラ・フォル・ジュルネ。日本には2005年に上陸した、ゴールデンウィークの注目イベントだ。
しかし、その準備中、3月11日に東日本大震災が発生。公演の中止、延期、自粛があいつぐ中、この音楽祭を開催すべきかどうかという決断を事務局は迫られた。
「まず会場、舞台機構の安全点検、次に海外からの450人ものアーティストが果たして来られるか、を心配しました」とエクゼクティブ・プロデューサーの鈴木順子氏。
「でもアーティストたちから届いた『なにか自分たちにできることはないか?』との数多くのメッセージに込められた気持ちを大切に考えたい、音楽の力をできるかぎり多くの人に伝え、その輪が広がり、日本全国へ、被災地までも届けたい、との思いで開催を決めました」
計画停電、節電という状況下で、可能な限りの節電で計画を変更し、不確定な状況にも対応できるよう準備を進めている。
今回のテーマは「タイタンたち」、1850〜1950年のロマン派後期から現代音楽の誕生まで、ブラームス、リスト、ブルックナー、マーラー、R・シュト
ラウス、シェーンベルクなどを取り上げる。時代的には普仏戦争から第一次、第二次世界大戦に至る絶えざる戦争と、困難の中にも多彩な曲が生まれた音楽文化
豊饒の時代。
宗教的に日本とは違った地盤の上にできたクラシック音楽だが、今回演奏されるレクイエムや宗教曲には誰もが粛然として襟を正すことだろう。
いつもは前夜祭として行われているコンサートを、今回は「とどけ! 音楽の力 広がれ! 音楽の輪」と題して東日本大震災復興支援コンサートとして行い、収益金の一部を東京都を通じて寄付、会場内の募金も予定されている。
またラ・フォル・ジュルネ2011は、金沢、新潟、びわ湖、鳥栖でもそれぞれ開催される。「アーティストも興行としてではなく、音楽の力を広めたいという
志で来てくれます」(鈴木氏)とのこと。文化芸術関係の催しが、その存在意義を改めて問い直される時、この音楽祭はどのように響くのだろうか。(慎)
東京:4/28(木)〜 5/5(木)
金沢:4/28(木)〜 5/4(水・祝)
新潟:5/1(日)〜 5/8(日)
びわ湖:4/29(金・祝)〜 4/30(土)
鳥栖:5/1(日)〜 5/7(土)
公式ウェブサイトで最新情報を。
www.lfj.jp
この時期だからこそ、志を持って音楽を。
エクゼクティブ・プロデューサーの鈴木順子氏