3月20日、27日の県会議員選挙第1、第2回投票は棄権率平均55%という国民ふてくされの選挙に。第1回得票率:社会党24.9%、与党UMP17%、極右国民戦線党FNは15.2%で与党に接近!最終的に左派47.5%(1186人)、右派35.6%(695人)、FN11.57%(2人)、エコロジー派2.9%(29人)と県の2/3以上が左派の手に。が、FN支持者の多い南仏、モーゼルなど東部県では第1回選でFNが48〜54%獲得し、大躍進。
70年代以来、反ユダヤ・移民排斥主義を掲げてきたFN党首ジャン=マリー・ルペンの娘マリーヌ(42)は、今年1月15日に党首に選ばれ、極右のジャンヌ・ダルクのごとく、サルコジ政権に絶望する大衆の心をつかむ。長年、異端視されてきたFNのイメージチェンジを目指すマリーヌ党首(ファーストネームで呼ぶ支持者が増加)は父親の旧態依然の戦術を一新、社会的・経済的にうずもれた大衆は彼女を代弁者とみなし、サルコジ政権糾弾票を投じたよう。
マリーヌ党首は、失業、購買力低下、治安悪化、移民急増などに憤る庶民を共鳴させるポピュリスト路線で、保護主義とユーロ圏からの離脱も掲げている。折しもチュニジアのジャスミン革命後シチリア沖の島に上陸した密入国移民がEU諸国に流れこむのを恐れた投票者らは、「フランス人のためのフランス」を説くマリーヌ党首の移民排斥演説に共感し、父親の時以上の支持票を投じたとみられる。
マリーヌ党首は2月、「ムスリム市民が路地を占領しイスラームの説教にひざまずく情景は、フランスがナチスに占領されたのと似ている」と放言。それに負けずサルコジ大統領は「キリスト教はどこまでもフランス文明の根源」と向こうをはる。マリーヌの誘い水に大統領もコペUMP書記長も、移民差別発言を重ねるゲアン内相もみごとにはまる。マリーヌに追いつけ追いこせで、昨年尻つぼみになった仏アイデンティティ・移民論争の復活か、コペUMP書記長の音頭で4月5日、「仏国内のイスラームと政教分離制」に関する会議を開催。信仰の自由、政教分離を保障する共和国でイスラームをやり玉にあげるこの会議をフィヨン首相は危険視し、大統領と一線を画する。
また県会議員選挙第1回投票で多くのUMP候補が破れ、PS 対FNの決選となった投票区の支持者に大統領とコペ氏は「PSにもFNにも投票しないように」と指示したが、フィヨン首相は「FNには絶対投票しないように」、是が非でもFNを阻むべきと表明し、大統領と対立。大統領の意向に従わない首相をコペ氏は激しく批判し、政府・与党内の対立を際立たせている。
次期大統領選に現大統領が再立候補するかが不確かになりつつある現在、Ipsosの世論調査(3/26)によれば、第1回投票でPSストロース=カーンIMF専務理事(立候補していないが)34%、マリーヌ・ルペン21%、サルコジ大統領17%で現大統領が排除され、PS対FNの一騎討ちになる予想。02年大統領選第1回投票で社会党の元首相ジョスパン候補が破れ、シラク対父ルペンの決選となったが、来年は対抗馬を替えて、いよいよ娘マリーヌの出番になりそう。(君)