「何があったの、娘が事故にでも遭ったの!?」地下鉄の中、携帯に叫ぶヴァレリーさんに、「うっ、うっ」と嗚咽(おえつ)で声も出なかったアルノー
さん。2007年、バゲットコンクール最優秀賞受賞の知らせを受け、真っ先に妻に報告する瞬間だった。モンマルトルのパン屋のマダムとご主人。1992
年、真っ白なゲレンデでスキー仲間を通して出会った。当時、ヴァレリーさんは経営学部の大学院生、アルノーさんは菓子職人。全く接点のない二人だった。一
目ぼれではないというが、その日以来19年、片時も離れたことがない。出会って4年後に結婚。98年、マルティール通りに色とりどりのお菓子も売るパン屋
を開店。あの界隈が徐々にBOBO化してくるころだった。ヴァレリーさんは、すぐ店には立たず、パリ屈指の高級食材店でマーケティングの仕事を続けた。
「あのころ、生活のリズムが違いすぎたから辛かったわ。しかも私たちの住まいは、パン屋の真上。部屋にはたえず1センチの小麦粉が積もっていたの」。過酷
といわれるパン職人の生活、当時アルノーさんは一日18時間労働だった。彼女が友人とのソワレから戻る深夜、起きだして仕事開始。出会って10年目、長女
の誕生を機に、夫婦で働く決意をした。
彼女は商品のプレゼンテーションや経営戦略がお手のもの。店は大繁盛。さらに2店舗オープンし、従業員も増えた。2004年と2009年
に息子が誕生。「信頼できるスタッフに恵まれて、2年前から午前2時に起きなくてよくなったんだ。これは17歳から働きはじめた僕にとって、画期的なこ
と。今は夜8時半に帰り、妻と一緒に夕食を食べられるのがうれしい」と、喜びをかみしめるアルノーさん。その隣で彼を誇らしげに見つめる彼女。才能ある夫
を全面的にサポートし、縁の下の力持ちとして「成功した人」がみせる表情だ。ヴァレリーさんに次の展望を聞いたみた。「子供が一人増えるたびに、一部屋広
いアパートに移り、一店舗増やしてきたの。次はもう一部屋広い所に引っ越したい。そして4軒目のお店を持ちたいわ」(咲)
Arnaud DELMONTEL : 39 rue des Martyrs
これから相手に期待したいことは?
「もっと(僕の気持ちを)配慮して欲しい」(ア)
「素晴らしいファミリーを築くことかしら」(ヴァ)
前回のバカンスは?
「昨年11月の万聖節。エヴィアンのホテルへ。子供たちは子供たち向けの活動があって、夫婦でゆっくり過ごせたの」(ヴァ)
夢のバカンスは?
「二人だけの旅行。ブリュッセルとかいいね」(ア)
「大西洋岸のフェレ岬に行きたいわ!」 (ヴァ)
最近、二人で行ったイベントは?
「パトリック・ブリュエル主演の舞台『Le Prénom』は面白かった。いつも一緒だから、外の刺激を受けることが大切」(ア)
お気に入りのレストランは?
Thoumieux(79 rue Saint Dominique 7e 01.4705.4975)
「シェフのJFピエージュさんは友人。外食するなら必ずここだよ。ブレス産雌鶏のフォアグラソースに目がないんだ」(ア)
カップルとしての満足度を5つ星でいうと?
★★★★1/2「あと40年は共に暮らすけど、いつも次の計画があるから絶対、退屈しないよ」(ア)
★★★★★「マンネリにならないようしたい!」(ヴァ)