“Le Plongeon 泳ぐひと”

 バート・ランカスターか初めから終わりまで海パン姿という、1968年製作、フランク・ペリー監督の、不思議な不思議な傑作。そのランカスターの肉体には、『地上より永遠に』(’53)で、デボラ・カーと波打ち際のキスシーンを演じた時の、はっとするような美しさはない。52歳の、ボディビルで鍛えてあるが,どうしてもたるみが出てしまう肉体だ。それがいい。
 友人の家にいきなり現れたネッド(ランカスター)は、どこで着替えたのかもう海パン姿!!「一緒に泳ごう」と誘うが断られてしまう。友人は車で送るよと言うが、見回したところ友人たちはみんなプールを持っているから、それを泳ぎながら帰るよ、とネッドは答える。(ベトナム戦争中だが)この郊外では、成功者たちがみんなプールを持ち、週末のパーティを楽しんでいる。
 そして一軒一軒訪ねてはプールで泳ぐネッドが、友人たちにとって「招かれざる客」であることが少しずつわかってくる。昔娘の子守りだった、今では美人になった20歳の女性との出会い。二人で馬と一緒に走ったり、ハードルを跳んだりする幸せシーンが、変に長くて奇妙でセクシーなのだが、キスをしようとして逃げられる。元愛人の家に着くころには夕暮れも近づき寒さで震えるネッド。公営プールの喧噪の中では、敵意に満ちた視線を浴びる。
 そして妻と娘が待っているはずの家に着くころには激しい雨。その家は人影もなく、門は閉ざされ、荒れ放題。門にしがみついて、ネッドが独り雨に打たれるシーンの暗さ。救いがない。そうネッドは相変わらず海パン姿なのです。(真)
*Grand Action(5 rue des Ecoles 5e)とMac-Mahon(5 av. Mac-Mahon 17e)で公開中。