テレビの科学番組で、宇宙のしくみなどをわかりやすく解説していたイゴール、グリシュカのボグダノフ兄弟(61)が、共著『Le Visage de Dieu 神の顔』を出版した。すでに10万部近くが売れているという。内容はというと、宇宙の起源までさかのぼり、「なぜ宇宙はこれほどまでに秩序だっているのか」という問いの答えとして、神の意志をみようとする創造説に近づいているという。
1949年、二人はジェール県サンラリーにある城の中で生まれ、祖母に育てられる。大学で応用数学を学びながら、テレビ界に近づき、1979年から10年間、TF1で『Temps X』を担当する。二人揃っての独特の風貌(巨大な唇、長いあご)、宇宙服をまとったりという演出で、若者たちを引きつけた。1991年、共著で『神と科学—超自在論に向かって』を出版するが、米国バージニア大学の天文学教授に、自著を剽窃(ひょうせつ)されたと訴えられ裁判になり、和解という形でおさまっている。グリシュカは1999年、イゴールは2002年、ブルゴーニュ大学の博士号を取得したが、珍しいほど低評価のグレードだった。
つい最近、週刊誌マリアンヌは、彼らの博士論文に関する国立科学研究センター(CNRS)の報告を暴いた。「論文は一貫性に欠け、重大な混同があり、不正確か理解不可能な論理に溢れている。結論を言うと、この論文の価値はゼロ」と厳しい。論文の指導教授は「彼らは10年間無給でがんばった。博士として認められる権利がある」と弁護する。「私たちの新著の出版に合わせた企み」とボグダノフ兄弟。でもこのすっぱ抜きが、逆に、販売数を増やすことに一役買うことはまちがいなさそうだ。(真)
Grasset社発行。18€。