潮風が心地よい港町で、グルメ巡礼…
港町ラ・ロシェルを訪れる食いしん坊の目当てといえば、何といっても海の幸。この町には何軒か老舗レストランがあるけれど、到着した日のお昼は地元の人たちが集まって楽しそうに食事をしている〈La solette café〉へ。かつては漁師で賑わっていたというサン・ニコラ地区の広場にたたずむこの店では、とびきり新鮮な魚介が味わえる。カウンターの向こうで真剣に料理にのぞむブルノさんお手製の魚のスープを飲めば、海の滋養のおかげで旅の疲れも吹き飛ぶよう。メインには、ぷりぷりしたエビや手長エビ、ツブガイ、カキなどが美しく盛られた一皿がおすすめ-1-。添えられた自家製のマヨネーズもおいしく、思わず至福のため息が出てしまう。
そこから海岸通りに出て、旧港入り口にそびえる塔を目印にずっと歩いていくと、行列ができるアイスクリーム屋〈Ernest〉に着く。試しに食べてみたチョコレートベースのシャーベットは実に爽やか、かつ深い味わい-2-。「人気の秘密は良質な素材」と胸を張る創業者に聞いてみると、チョコレートはヴェローナ社のものを使っているとか。カリカリしたヌガティーヌと香り高い胡椒もアクセントになって、忘れられないフレーバーになった。店内の工房で生地をつくって焼いているというコーンにもやみつきになりそうだ。
ちなみにこのアイスクリーム屋の向かい側にある建物は、19世紀半ばごろには魚のマルシェが開かれていたという〈La Coursive〉-3-。現在では演劇やコンサート会場、映画館などが入った町の文化施設として愛されている。特に、夏に行われる国際映画祭の時期には多くのシネフィルで活気に満ちあふれるこの建物、見上げてみると入り口にはホタテ貝をかたどった装飾がほどこされていたりして、今でも昔の名残がうかがえる。
翌日は早起きして旧市街のマルシェへ向かうことに-4-。もちろんのこと、場所は変われど魚のマルシェは健在で、レ・アール内の一画にはびっしりと生きのいい魚介類が並んでいる。色鮮やかな野菜のスタンドでは、バターでソテーするだけで特別な付け合わせになってくれるレ島産のほんのり甘いジャガイモが目をひく。なめらかなテクスチャーとほどよい酸味が自慢のヤギチーズTaupinièreや、真っ黒な焼き色が印象的な菓子Tourteauなどの名産品も数々あり、時間がたつのをついつい忘れてしまう。
マルシェのすぐそばには、コニャックやピノー(コニャックとブドウ果汁をブレンドしたもの)が揃う〈Paul BOSSUET〉が-5-。ブドウの栽培からワイン醸造、蒸留までを一貫して手がける生産者によるこのショップで、きらきら光る琥珀色の液体を目にした瞬間、帰りの荷物が重くなるのを覚悟した。(さ)
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La Coursive
映画担当のエディットさん。
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