●Soul Kitchen
ハンブルク。倉庫風建物のレストラン「ソウル・キッチン」は、スクワッターや練習場のないバンド、泥棒や頑固料理人も受け入れる懐の広さ。オーナーは大した展望なき青年ジノス。目下、彼女を追って上海行きを夢想中。そんな彼の前には乗っ取り屋の手が忍び寄る。
監督のファティ・アキンは現代ドイツ映画を牽引する才能。本作は、『愛より強く』『そして、私たちは愛に帰る』に続く〈愛、死、地獄の3部作〉完結編を撮る前に寄り道したコメディだ。トルコ移民二世監督による移りゆく都市のポートレイトだが、余計な感傷、資本主義に対する力んだ弾糾ポーズは一切なし。アキンのストーリーテラーの才も十二分に発揮された逸品。(瑞)