ヒッチコックが最も敬愛する作家ジョン・バカンが原作

●Les 39 marches
 外交官ハネイは、退屈しのぎに入った劇場で出会った美女を家に泊めるが、秘密諜報員だとハネイに語った美女は、翌朝何者かによって殺されてしまう。殺人犯として追われる身となったハネイはスコットランド行きの列車に飛び乗り、美女からもらった情報を元にイギリスの軍事情報を盗もうとするスパイ組織にひとりで立ち向かう。
 アルフレッド・ヒッチコックは、最も敬愛する作家だというジョン・バカンの原作を、1935年に『39 Steps  三十九夜』として映画化した。この作品が舞台化されたのは最近のことで、まずブロードウェイで大成功を収め、今回フランスでの初公演となる。ただし、パリの小さな劇場で公演するにはさらなる脚色が必要で、演出家パトリック・メテイエと脚本家ジェラール・シブレラの創意工夫溢れるアイデアがこの舞台の各所に見られる。
 まずは登場人物。ハネイ役(クリストフ・ロビオン)と3人の女性役(アンドレア・ベコン)を除く約150人が、たった2名の役者(演出家メテイエとジャン=フィリップ・メッシュ)によって演じられる。次は緻密に計算されたタイミングで繰り広げられるギャグのオンパレード。あらためて見たヒッチコックの作品にもさりげないユーモアが隠されていたが、メテイエはこのユーモアをさらに強調し、フランスならではの笑いを加えている。最後は空間の使い方。映画のようにサイズを変えながらカット割りができないからこそ、大道具、小道具や照明、さらには大自然の中の逃亡シーンを影絵で見せるなど、優れたアイデアが登場する。わくわくしながら、笑い、そして喝采を送り続けた。(海)
Théâtre La Bruyère : 5 rue La Bruyère 9e
01.4874.7699  火-土21h、マチネ土15h30、
日15h。20e-36e。