仏テレコム社員連続自殺。

 7月14日、フランス・テレコムのマルセイユ支社勤務のM氏は「フランス・テレコムの〈恐怖管理〉態勢は私を錯乱させ漂流物にさせた。これ以上は続けられない」と、同僚たちに書き置きして自殺した。働き者で知られる彼は30年勤務。9月9日トロワ市では、技術者が会議中、腹部にナイフを刺し自殺未遂。11日、パリ17区の同社建物の5階の窓から32歳の女性幹部社員が飛び降り自殺。
 いままで経営者側は社員の自殺を家庭・私生活の個人的問題を理由としてきたが、7月以来6人、08年2月以降1年半の間に23人自殺、13人未遂と、これらを自殺の連鎖反応としてはかたづけられなくなっている。08年の社員の病欠日数は180万にのぼるという。
 フランス・テレコムは1988年に仏電電公社から分離され、91年にフランス・テレコムと改称。以後国有株が徐々に売却され04年に民営化、現在国は27%所有。しかし社員10万人余の65%は公務員として雇われており、彼らの平均年齢は48歳。同グループは2000年に英国系モバイルOrangeを買収し欧州モバイル市場2位に。固定電話4900万、インターネット1200万、モバイル9800万の利用者数を抱えるマンモス企業にのしあがる。
 とくに06年から強行されている生産性強化対策はリストラ(06-08年2万2千人削減)だけでなく、先端テクノロジーについていけない社員や行動性に欠ける社員の左遷や人事異動、窓際族化、40代以上の社員の屈辱的配置転換による締め出し工作が顕著に。9月15日付共産党紙ユマニテはゾラの公開状をまねて〈J’accuse  私は弾劾する〉と題し、一技術者のロンバール社長宛の公開状を掲載。彼は勤務26年だが社内ではコード番号DYDO 5403と呼ばれる。6年前に自殺未遂、10カ月の病欠後配属されたのは最下部のポストだった。「タブーを破るべきだ。自殺は個人的理由ではなく仕事が原因。…強制異動による職業的、地理的アイデンティティの喪失…社員たちは経営者側の沈黙の前で、堂々とあえて自分の職場で命を絶っていくのです…」
 営利追求の企業体の中で1個の部品と化し、同僚と競わされるストレスにあえぐ社員の声は、自殺によってしか政府・経営陣の耳に届くことはなかったのだ。
 自殺の連鎖反応を危惧するロンバール社長は9月15日、ダルコス労働相と会談し、いくつかの緊急対応策を約束した。10月末まで異動と配置転換を中止し、カウンセリングの電話相談窓口の開設、人事課要員と産業医を増員し、ストレスや悩みを抱える社員の個別支援にあたるなど。 
 しかし一連の自殺者のなかで、労災が適用されたのはオフィスの窓から飛び降り自殺した女性だけ。彼女は民間雇用社員だった。皮肉にも社員の連続自殺によって初めて先端マンモス企業の〈恐怖管理〉が明るみに出たわけだ。(君)