19世紀前半のナポリ。裁判官クラウディオの若妻、マリアンヌに胸を焦がすセリオは、親友でクラウディオの従兄弟オクターヴに、仲立ちを頼む。オクターヴはマリアンヌに会いに行くが、マリアンヌの魅力を前に、自ら彼女のとりこになってしまったことに気づく。そんなオクターヴにマリアンヌも惹かれていく。
「私は人妻なのよ!」とセリオの話をするオクターヴの言葉に耳をふさぐマリアンヌが、「愛人をつくるかつくらないかを決めるのも、そして愛人を選ぶのも私」と言い放つ、その心情変化の過程がよく描けている。 支配的な年上の夫と過ごす退屈な時間とは正反対に、バルコニーに立つとにぎやかなナポリの町の人々が奏でる音楽や話し声が聞こえてくる。孤独なマリアンヌの奥底に眠っていた「生」と「性」への欲望がオクターヴの出現によって揺り起こされる。一度眠りから覚めた欲望は鎮まるところを知らず、身を投げ出しマリアンヌはオクターヴを求める…。けれども夫の庇護下にある妻に姦通する者を待つのは「死」のみだった…。
照明や舞台空間の使い方、19世紀南イタリアの郷土音楽からヒントを得て作曲されたオリジナル音楽を歌う役者たちの声が重ねていく複雑な響き…多くの工夫が見られる。セバスチャン・アゾパルディの演出は、観るたびに「巧い!」とうれしくなるのだけれど、今回も私の期待を裏切ることなく、ミュッセの美しいテキストがとても官能的に、そして創造力たっぷりに舞台化されている。
なによりオクターヴ役(クリストフ・ド・マルイユ)がセクシー!」と一緒に行った友人は興奮していた。私もほぼ同感。(海)
Théâtre Lucernaire : 53 rue Notre-Dame-
des-Champs 6e 01.4544.5734
10月半ば迄。火-土21h30。 10€-30€。
