「お受験なんて他人ごと」と高をくくっていたものだ。だがこれが親の弱いところで、いざ自分の子供の小学校入学が近づくと、「本当に近くの公立学校でよいのか?」と悩んでしまった。というのも、パリから少し離れたところに日仏のバイリンガル教育で名高い国立の名門校が存在するのだ。気になって説明会に足を運んでみた。先生方も熱心だし、授業の質も高そうだ。私が子供に戻って入りたいくらいだ。ジルも学校を気に入った様子。私たちは子供を私立の学校に入れる経済的な余裕はないが、国立ならばなんとか可能だ。ただし入学の暁にはパリ郊外に引っ越しをしなければならない。私の仕事のためには不便になってしまうのが、正直痛い。
そして5月に入り、倍率は高そうだがミラをお受験させてみることに。とはいえ歳が低いので、日本語とフランス語の各セクションの先生と面接があっただけだ。面接中、親は教室の外で待っている。面接が終わった。早速、ミラに内容を根掘り葉掘り聞く。すると「消防車」や「パトカー」なんかを日本語で言えなかったという。そういえば、ミラはサイレンのなる車を「ピーポー車」と勝手に呼んでいたが、私は面白くてついそのままにしていたものだ。ガックリと肩を落とす私に、ミラはただ「面白かったよ」と平然としている。どこから見ても、親の方が完全に落ち着きを失っているのだった。(瑞)