ロワール川に合流するシェール川に沿ったベリー地方といえば、セル・シュル・シェール、クロタン・ド・シャヴィニョルなど山羊乳のチーズのメッカといってもいい。家に遊びに来た友人が、ベリー地方の実家で週末を過ごしたおみやげ、といって差し出してくれたのは、1972年に山羊乳チーズとしては初めてA.O.C.を獲得したというプーリニー・サン・ピエールだ。形は親戚チーズのヴァランセに似ているが、もっととがったピラミッド形。「エッフェル塔ともいわれるんだ」と友人。風通しのいいカーヴで1カ月近くかけて熟成される。表面は青みがかった白カビで薄く覆われ、ピラミッドのいただきからナイフを入れて切ってみると、密な白色の身が現れる。表面に近いところはややトロリ。
口にふくんでじっくりとかみしめる。山羊乳特有の軽い酸味はあるが、かなりクリーミー。塩味も薄めで、これまで食べた山羊乳チーズの中でも、いちばん上品な風味。
このチーズのうまさを十分に引き出してくれるワインはというと、サンセールやカンシーのような、フルーティで辛口の白。(真)