パルムドール受賞作。 “Entre les murs”

 フランスが世界に誇る一大イベント、カンヌ映画祭で主催国フランスの映画が21年振りに最高賞のパルムドールに輝き世間は大騒ぎ。ローラン・カンテ監督『Entre les murs』は、パリ20区に実在する中学校にカメラを据え、そこの生徒と先生たちが出演するドキュメンタリー×フィクションの魅力に溢れた作品。9月の新学期から1年間、映画は担任のフランス語教師と生徒たちの間で闘わされるディスカッションを追う。おのずとそこに社会問題、思春期の子供たちの危うさ、先生のあり方、生徒のあり方、双方のデリケートな関係が浮き彫りになってくる。
 観ながら、過疎の村の一学級しかない小学校の一年間を追ったドキュメンタリー、ニコラ・フィリベール監督『Etre et Avoir  ぼくの好きな先生』のことを思い出していた。そしてアブデラティフ・ケシシュ監督の『L’esquive  身のかわし』や『La graine et le mulet  粒とボラ』のことも…。映画が描き出したい環境を実際に生きている人たち(素人)に、限りなく自分に近い人物を演じてもらうと、それが予め用意された脚本(フィクション)の中であれプロの俳優が演じるのとは違ったナマな迫力、真実味が醸し出されてくる。もっと進んで脚本に彼らの人生を取り込んでしまう場合もある。フィクションとドキュメンタリーの境目が溶け合った作品が最近の映画の一つの潮流となっている。今回の受賞はその象徴ともいえる。本作品の世界各国での配給が決まってゆく中で未だ日本だけは手を挙げた配給会社がない。とてもフランス的でありながらカンテ作品にはそれを超えた普遍性があるという意見、機関銃のように放たれる言葉による生徒と先生の応酬と自己主張にはついていけないという日本人の感想。10月15日公開、あなたの意見は?(吉)