サンパピエとは滞在許可証のない不法滞在者のことで全国に20~40万人はいるという。いつもは警官の眼を避けてレストランや建設、ホテル、清掃業界で働くサンパピエ600人が、4月15日からイル・ド・フランスの各地で正規の滞在許可証を要求し、共産党系労働組合CGTの支援のもとに職場を占拠しストに突入したものだから、労働市場の隠れた部分が白日にさらされるはめに。スト参加者のほとんどはアフリカ諸国出身で、彼らの多くは数年来、社会保障費も税金も払っているという。ではなぜ警察の眼を恐れるのか。本国に帰国した友人や親類の者の滞在許可証と医療保険証Carte Vitaleを譲り受けたか、300~1000ユーロで手に入れた偽造の滞在許可証か仏国籍者身分証によって職につけた者が多いからだ。
社会保障費などを無申告で彼らをヤミで雇う企業主がいないわけではないが、移民省は企業主に宛てた昨年7月1日付の通達で、外国人被雇用者の滞在許可証が真正であるか警視庁による確認を義務付けている。今まで雇い主は眼をつぶるか知らないふりをしてきたか、正規の滞在許可証を要求して立ち上がったアフリカ人労働者らが「不法滞在者とは知らなかった、彼らにだまされていた」と責任を回避する企業主のほか、レストランで不可欠となったアフリカ人調理人のストを支持する店主もいる。飲食業だけで5万人のサンパピエが働いているといわれるが、4月24日、サルコジ大統領は記者会見で「正規の外国人滞在者の22%が失業中なのだ」と不法滞在者を雇う企業主を「ヤクザ」呼ばわりし、彼らの欺瞞的な態度を皮肉っている。
スト参加者は5月上旬から3区のシャルロ通りにある労働組合会館(写真は5/12日撮影)を占拠し、夜は家族も含め2、3百人が同建物の廊下で寝起きしている。彼らは1000件の滞在許可証を要求し、CGTを介して警視庁に書類を提出。が、ケースバイケースによる分断作戦で、5月22日までにスト参加者の70人余に仮の滞在認可が下りただけ。彼らの中には、 警視庁の遅延作戦にのせられたCGTの「裏切り」をかこつ者も。彼らが最も恐れるのは、ストを支持していたレストラン店主もストが長引けば商売あがったりと彼らを解雇し、雇用契約などない者は国外退去となりかねないことだ。
サンパピエはメディアに訴える男性労働者だけではない。彼らの妻子や、マグレブ、アフリカ、東欧出身の女性も多くいる。彼女らは掃除や老人介護、子守りをして月々の足しにしているが、いつ警官のコントロールに遭うかびくびくしながら暮らしているのだ。(君)