フランス全国の刑務所の服役者数は6万人を超え全刑務所の収容能力5万人を20%近く上回っている。「これを解決するのは簡単なことだ。刑務所にいても意味がない人たちに立ち退いてもらうことだ。精神病者、滞在許可証を保持しない人、ホームレス、精神が錯乱した老人たち、行き場のない若者たち、麻薬中毒者…彼らには刑務所とは異なる、彼らにもっと適した施設が必要です」と語るのは、1993年からパリ郊外にあるフレンヌ刑務所のカウンセラーを務めている精神科医クリスチャンヌ・ド・ボールペール。現行の刑法では精神病者を刑務所に入れることは禁止されているにもかかわらず、服役者の25%が、精神分裂、偏執狂、強度の抑うつ症などの精神疾患に苦しんでいるという。精神分裂症に苦しむ殺人犯や傷害犯たちは、分裂症は治りにくい病気なので服役後に社会に出ても危険性が高いという理由で、さらに重い刑を受けている。 「なんて不思議なことだろう! 時代を間違っているようだ。ミシェル・フーコーが記述したごとく、刑務所が精神病院のかわりになっている。精神病者に対し、17世紀のサルペトリエール病院さながらの厳重な監禁を行っているのだ」。彼女の怒りはまだまだおさまらない。「精神分裂に苦しんでいる人を刑務所という暴力にさらし、さらに彼らの病を重くするということが許されるのだろうか? 金融犯罪の実行犯をやすやすと釈放する一方で、未成年者たちや精神疾患者を刑務所に入れるような国に、民主主義があるといえるのだろうか?」(真)
ド・ボールペールの協力を得ながら、ジャーナリストのヘルツベルグが書いたフレンヌ刑務所告発の書。Seuil社発行。