1995年、ジュペ元首相が大規模なストとデモに合い撤回せざるをえなかった年金特別制度の改革に、サルコジ大統領とフィヨン首相が挑戦。その強引な進め方に反発する国鉄・パリ交通公団RATP他、電気・ガス公社職員の大規模なデモが10月18日に予定されている。 フランスの年金制度は三種類に分かれ、民間就労者の一般年金と公務員年金、そして現在問題になっている特別制度だ。民間所得者が年金を満額受給するための保険料払込期間は、1993年バラデュール政権時に37.5年から40年に延長された(社会保険料負担率は給与の約10.50%。過去20年の平均賃金を基準に給付額を算出)。公務員も2003年ラファラン政権が、払込期間を37.5年から40年に延長(負担率7.85%、特別手当除く。給付額は過去6カ月の賃金が基準)。 年金特別制度の対象者は、主に電気・ガス(負担率は特別手当除く給与の12%)、国鉄・RATP(負担率7.85%)他、オペラ座、コメディ・フランセーズ関係者(1914年以来)、上下院議員、船員・鉱山労働者など124種、約50万人に対し年金受給者は110万人にのぼる。国鉄職員の定年は55歳だが運転要員は50歳。民間でも14~16歳から仕事についた長期就労者は55~ 58歳で定年退職できる(運送業運転手などは危険で重労働のため就労期間に関係なく55歳)。 サルコジ大統領は年金制度による不公平さをなくすために、特別制度の払込期間を現行の37.5年(給付額は公務員と同様に過去6カ月の賃金を基準)を40年に延長する改革案を提示。 労働組合代表らも特別制度の持続は困難とみているが、十把一絡げ式でなく職種・企業別の話し合いによる改革を要求している。 10月2日、ベルトラン労働相が発表した具体案によると、船員・鉱山労働者・上下院議員を除く特別制度対象者に同改革案を適用し、さらに2012年からは一般年金同様に払込期間を41年に延長することや、給付額の引上率を賃金でなく物価スライド制にする方針を発表。 サルコジ大統領は、さらに60歳後の就労を促進するため、60歳前の退職者への給付減額制を設けるなど「多く稼ぐために残業すべし」と同様に、多く年金をもらうためにできるだけ長く働くべしとサルコジ式年金体制を用意している。 サルコジ大統領とフィヨン首相はこの他に、週35時間制の形骸化(残業手当免税・社会保険料免除)や、職業安定所ANPEとUNEDIC(失業保険支払い機関を管理する組織)の合併、中年労働者雇用策(50-55歳での解雇に重課税)など労使が追いつけない速度で改革を急ぐ。来年の市町議会選挙と5年後の大統領再選を標的に入れてか、その猛進ぶりに国民は戸惑い、野党陣営も批判の焦点が定まらないよう。(君) |