Marie Dewavrin おもちゃ屋店主 マドレーヌ広場の魅力は手の届く贅沢さ。

 古代ギリシャの神殿を思わせるマドレーヌ寺院。ナポレオンやルイ18世などがかかわり、78年の歳月をかけ、1842年に完成した。ここから目と鼻の先に、寺院よりも古い歴史をもつおもちゃ屋さんがある。1836年創業の〈Au Nain Bleu〉。170年もの間、8代にわたって、パリの歴史を見つめてきた家系。女主人のマリーさんは語る。「ある日、先代の叔父が店じまいすると宣言したの。その時から、私の人生は一変したわ。この店が消えてしまわないよう、闘おうと決心したの」。というのも、マリーさんはたった一人の血縁だった。営業権と店舗を要求して、他の親族との間で骨肉の争いを繰りひろげた末、勝訴。一年前、法律相談の仕事をなげうって、おもちゃの世界に飛びこんだ。
 「私にとって、マドレーヌ広場は、古き良きパリの象徴であり、パリの表看板だわ」。ナン・ブルーは、70年も続いたキャプシーヌ通りの小さなブティックを原点に、オスマンのパリ大改造でサントノーレ通りへ移って100年。そして去年、クリスマスを前に、マルゼルブ通りに苦心の末、開店した。いうならば、マドレーヌ広場を中心に、円を描いてきたのである。「マドレーヌ界隈と一口にいっても、200メートルも進めば全然違う顔をもっている。ここは大型デパートの連なる界隈とは違う。その先の金融街とも違う。ラペ通りのゴージャスさとも違うし、宝石商が集まるヴァンドーム広場とも違う」。寺院の周りには、フォション、エディアールといった老舗店がひしめきあい「マドレーヌ広場の魅力は、手の届く贅沢があること」だという。
 「あの日、叔父の一声で私たちが決意したのは、今動かなきゃダメってこと」。36歳。9歳の男の子を筆頭に、7歳、5歳、2歳の子供の母でもある。彼女自身は3歳で、店のカタログにモデルとして登場。以来まったく別の道を歩んできたが、「安くてお手軽なおもちゃが氾濫するこのごろ、『伝統的な職人技を誇る』おもちゃの行く末が見たかったし、その冒険に乗ってみたいと思ったの」
 またマリーさんは生まれ育った8区の、〈子供を持つ8区の親の会〉のメンバーでもある。「地域密着型で、いろんな社会活動に参加したいと思っているわ。でも、もし左岸の歴史ある家系に生まれていたら、きっとマドレーヌ界隈には来なかったかな。きっと別のカルチエと深い絆を結んでいたことでしょうね(笑)」(咲)

 


●Parc Monceau
 「入り口にある円形の建物、ロトンドは風情があって美しい」とマリーさん。18世紀半ば、シャルトル公が造らせたイギリス式庭園で、古代エジプトやローマ、遺跡やモニュメントをおりまぜた、自由な発想の空間だ。池のほとりにはローマ様式の柱が立ち並び、柳がうっそうと生い茂り、木陰からは小さなピラミッドが顔を出す。8.2ヘクタールの小さな園内は、緑に包まれ、自然が奏でる美しさが凝縮している。マリーさんは、モンソー公園の美観を守る会L’Association des Amis du Parc Monceauのメンバー。
boulevard de Courcelles M。Monceau
冬7h~20h(夏は22 hまで)。無料でWifi使用可。